薬物検査とは
薬物検査とは
薬物検査とは、投薬治療している患者の血液中の薬物濃度を測定し、薬の効果および副作用を把握した上で、有効な薬物濃度になるように個別に調整するための検査です。
身長、体重、体表面積など個人差があり、薬剤の代謝などにも個人差があります。時に有害な作用に関連し有効性を減じることもあります。そして、同時に投与されている薬剤との相互作用により、薬剤の代謝が変化することも知られています。
薬剤による治療に影響する個人差を、血中濃度を測定することにより適正な血中濃度の範囲に収めるために、薬物血中濃度測定が行われます。
薬物検査の項目
抗菌薬
【主な検査項目】
バンコマイシン
バンコマイシンは、グリコペプチド系抗生物質、細菌の細胞分裂時の細胞壁mucopeptide合成の初期段階を阻害し、好気性及び嫌気性のグラム陽性菌に殺菌作用があり、特にMRSAには有効な抗生物質である。
テイコプラニン
テイコプラニンは、バンコマイシンと同様のメチシリン耐性黄色ぶどう球菌(MRSA)等に対するグリコペプチド系抗生物質である。細菌の細胞壁 ペプチドグリカン前駆体のC末端部分のD-Ala-D-Ala部位に結合し、細菌細胞壁合成を阻害することにより、MRSA抗菌作用を示すものと考えられている。
抗てんかん薬
【主な検査項目】
カルバマゼピン
カルバマゼピンは、中枢神経の抑制をせず抗てんかん作用を発揮する薬剤である。てんかんのけいれん発作や精神神経症状を抑えたり、三叉神経痛の痛みをとる目的でも用いられることがある。抗てんかん効果は脳内濃度に依存し、末梢濃度と平行関係にあるため血液中濃度を測定することは意義がある。
ジアゼパム
ジアゼパムは、benzodiazepine(BDP)系薬物で、抗不安作用、催眠作用、抗痙攣作用および筋弛緩作用を有する薬剤で、神経症やうつ病、不安、緊張、抑うつ、筋緊張の軽減、あるいは麻酔前薬として用いられる。また、静注は作用発現が速やかで作用時間が短いことから、てんかんの重積状態の抑制に有用性が高い。
エトスクシミド
エトスクシミドは消失半減期の個人差が大きいため、服用量が同じでも血中濃度は個人差が大きく、血中濃度が変化し効果が変わる。そのため血中濃度を測定しながら、患者個々に最適な臨床効果が得られる服用量を設定する必要がある。
フェノバルビタール
フェノバルビタールは、単独服用する限り、服用量から血中濃度を予測することができるが、疾病時や薬物間相互作用によって血中濃度が大きく変化し効果も変わる。また、他の抗てんかん薬の血中濃度に大きな影響を与えるので、併用薬物も含めて血中濃度も測定しながら臨床上最適な服用量を設定する必要がある。
免疫抑制薬
【主な検査項目】
シクロスポリン
シクロスポリンは、強力な免疫抑制作用を有するポリペプチドであり、腎移植をはじめとする臓器移植における拒絶反応の抑制剤、免疫抑制など広く使用されている。しかし、治療有効濃度が狭いため、十分な効果を得るために、血中濃度のモニタリングが必要不可欠である。
タクロリムス
タクロリムスは、免疫抑制剤であり、主にT細胞からの分化・増殖因子であるインターロイキン2およびインターフェロンγ等のサイトカインの産生を阻害することにより発揮される。経口投与時の吸収は患者により個人差が生じため、個々のモニタリングが重要であり、投与量を調節するために血中濃度の測定を頻回に行う。
ミコフェノール酸
ミコフェノール酸は、de novo系のDNA合成経路を選択的に阻害することでリンパ球の増殖を抑え、臓器(腎臓、膵臓、肺、肝臓)移植後の拒絶反応を抑制します。移植後の急性拒絶反応の予防のためにAUCやトラフ濃度などの体内動態パラメータを管理することが重要と考えられています。
循環器用薬
【主な検査項目】
ジゴキシン
ジゴキシンは心臓に直接作用して、心臓の収縮力を強めて強心作用を示す。ジキタリス製剤の中では速効力があり、また利尿作用もあるので、色々な原因によっておこっている心不全の症状の改善に有効である。
ジソピラミド
ジソピラミドは、抗不整脈薬であり心房と心室の不応期とヒス束伝導時間を延長し、心収縮性を低下させる。特にジソピラミドは、上室性不整脈や心房細動に対しての有効性が高い。
プロカインアミド
プロカインアミドは、抗不整脈薬であり、心室期外収縮、心室頻拍、WPW症候群に伴う上室性頻拍などに有効である。
精神神経用薬
【主な検査項目】
リチウム
リチウムは、躁うつ病および情動疾患を伴う精神病治療薬として広く使用されている.リチウムのクリアランスの減少や再吸収の促進などは血中濃度の上昇につながる危険がある。
ハロペリドール
ハロペリドールはブチロフェノン系抗精神病薬で、統合失調症や躁病の治療薬として広く用いられている。有効かつ安全に投与するためには、血中濃度を測定して投与量の調節を行うことが必要である。
疾患別 効果が期待できる薬物
心疾患 | ジギタリス製剤 |
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てんかん | 抗てんかん剤 |
気管支喘息、喘息性気管支炎、慢性気管支炎、肺気腫、未熟児無呼吸発作 | テオフィリン製剤 |
不整脈 | 不整脈用剤(継続的に投与) |
統合失調症 | ハロペリドール製剤、ブロムペリドール製剤 |
躁うつ病 | リチウム製剤 |
臓器移植術後 | 免疫抑制剤 |
ベーチェット病 | シクロスポリン |
若年性関節性リウマチ、リウマチ熱、慢性関節リウマ | サリチル酸系製剤 |
悪性腫瘍 | メトトレキセート |
全身型重症筋無力症、関節リウマチ、ループス腎炎、潰瘍性大腸炎、間質性肺炎 | タクロリムス水和物 |
重症、難治性真菌感染症、造血幹細胞移植 | トリアゾール系抗真菌薬 |
片頭痛 | バルプロ酸ナトリウム |
慢性骨髄性白血病、フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病 | イマチニブ |
結節性硬化症に伴う上衣下巨細胞性星細胞腫 | エベロリムス |