免疫血清学的検査とは

免疫血清学的検査とは

人の体は、体外から侵入してくる細菌やウイルスなどの異物に対して、体内が抵抗することで血液中に抗体がつくられ、免疫が構築されます。異物と抗体が結合して異物を排除する働き免疫反応といいます。このように免疫が構築されることで、同じ異物が体内に侵入しても、免疫が排除し体が守られる仕組みになっています。免疫血清検査では、この免疫反応の働きを応用して、抗原や抗体の有無や量を調べる検査しています。
免疫血清検査には、感染症や自己免疫関連などの検査があり、感染なのか免疫異常による炎症なのか判別するのに使用されます。感染症では肝炎ウイルス、梅毒、自己免疫関連では関節リウマチ、膠原病などの診断には欠かせない検査です。

免疫血清学的検査の項目

感染症(非ウイルス)関連検査

【主な検査項目】
梅毒定性RPR

真性梅毒、先天性梅毒、梅毒の初期感染、治療後の梅毒、潜伏梅毒、梅毒とBFP(生物学的擬陽性)の判別、妊婦梅毒、治療効果の判断。

クラミジアトラコマティス IgA
本菌はヒトを自然宿主としてヒトからヒトへ伝播し、封入体結膜炎やトラコーマなどの眼疾患、非淋菌性尿道炎、子宮頸管炎、骨盤内感染症など、多彩な病気を引き起こすため早期診断、早期治療が重要となる。

百日咳抗体
百日咳ワクチンの成分であるPT、FHAに対する特異的IgGを測定し、ワクチン接種後の抗体獲得の確認、百日咳感染の診断補助に有用である。

自己免疫関連検査

【主な検査項目】
抗シトルリン化ペプチド(CCP)抗体

抗CCP抗体はRAに対する高い特異性と感度を有することや、RA発症早期から陽性となるため、RAの早期診断に有用である。

抗SS-B/La抗体
抗SS-B抗体は特にシェーグレン症候群に特異的で、疾患マーカー抗体とされている。

抗RNP抗体
抗RNP抗体は特異性が高く同定法として最も一般的なものである。種々の自己免疫疾患に認められ、疾患特異性はないがMCTDでは高率に出現する。

抗Jo-1抗体
抗Jo-1抗体は、多発性筋炎/皮膚筋炎(PM/DM)に特異的な自己抗体として見いだされ、しかも陽性例はPM/DMに限られることから、PM/DMの重要な疾患標識抗体(マーカー抗体)とされている。PM/DMの診断は疾患特異抗体と考えられている抗Jo-1抗体は診断の補助となる。

抗ミトコンドリア M2抗体
抗ミトコンドリア M2抗体は患者血清中の抗ミトコンドリア抗体を測定するものであり、ピルビン酸脱水素酵素複合体の確定診断に有用である。

免疫血液学的検査

【主な検査項目】
血液型不適合妊娠
胎盤を通過するIgGクラスの抗A・抗B抗体価を測定し、胎児の危険度を予測する。

ABO・Rh(D因子)式血液型
輸血、臓器移植、新生児溶血性疾患、個人鑑別 等の目的で行われる。

免疫グロブリン

【主な検査項目】
IgG
免疫グロブリン(Ig)の量的あるいは質的な異常をとらえることにより、免疫機構の全体的な機能異常を知る手がかりが得られる。

免疫電気泳動 
蛋白成分は様々な病気において質的あるいは量的に変動をきたすので、それらの成分を分析することで疾患の診断や病態把握に有用である。

オリゴクローナルバンド
脱髄性疾患(多発性硬化症等)や中枢神経系感染症(ウイルス性脳炎、急性無菌性髄膜炎、神経梅毒、急性特発性多発神経炎等)などの補助的診断や予後の経過観察に有用である。

補体および関連物質

【主な検査項目】
血清補体価
血清補体価(CH50)の測定は、補体系異常の関与する疾患や先天性補体成分異常症などの診断・経過観察・治療効果判定に有用である。

血漿蛋白

【主な検査項目】
レチノール結合蛋白 (RBP)

レチノール結合蛋白は、肝・腎機能、標的細胞における代謝や異化の程度などにより変動するため、肝胆道疾患や腎疾患の病態の把握に有用である。また、RBPの血中半減期は約16時間と短く短期間の栄養状態の把握にも広く用いられている。

ハプトグロビン
血中ハプトグロビンは急性相反応物質や溶血の有無のチェックおよび肝障害の程度、不適合輸血の場合などに有用である。

心筋トロポニンT
トロポニンTは、現在最も特異的な心筋障害のマーカーと考えられている。また、心筋特異性が極めて高いため、骨格筋障害を伴う場合(ショックや重症心不全の合併、筋肉注射やカウンターショックの施行など)に特に有用である。

ヒト癌胎児性フィブロネクチン
ヒト癌胎児性フィブロネクチンは卵膜の異常を検知することにより早産の危険性を把握することに役立つ。

サイトカイン

【主な検査項目】
TARC(Th2ケモカイン)

清中TARC量は、アトピー性皮膚炎と診断された患者の治療薬の選択・変更を検討する際の重症度評価において、 主体となる皮膚症状の評価に加え、TARC検査は重症度評価の補助として臨床的に有用であると考えられる。

インターロイキン-6 (IL-6)
インターロイキン-6 (IL-6) は、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) において人工呼吸に伴う挿管の必要性を判断することを目的として、2020年5月に米食品医薬品局の緊急使用許可 (EUA) を取得しています。救急・集中治療におけるCOVID-19の重症度判定への活用が期待されます。