内分泌学的検査とは
内分泌学的検査とは
内分泌学的検査とは、ホルモンを分泌する器官である副腎や膵臓、下垂体、甲状腺の異常をチェックする検査です。ホルモンを測定することにより、正確な診断や病気の詳細を知ることができます。
内分泌疾患は血中ホルモンが低下する場合と亢進する場合があります。内分泌機能亢進症は、血中ホルモンの値が上昇することやそのホルモン分泌を促す因子が低下していることがあります。反対に内分泌機能低下症では血中ホルモンが低下し、産生促進ホルモンは上昇します。
内分泌腺の機能の亢進または低下により、ホルモンは分泌が増大したり減少したりします。また、ホルモンが作用する受容体機能の異常により、様々な症状が発症します。そのため、ホルモン濃度の測定や負荷試験など、内分泌学的検査を行い、ホルモンの分泌や制御の異常を明らかにします。
内分泌検査の項目
視床下部・下垂体ホルモン
【主な検査項目】
成長ホルモン(GH)
成長ホルモン分泌不全低身長症、先端肥大症の診断、治療効果の判定に不可欠な検査。
甲状腺刺激ホルモン (TSH)
血中TSHの測定は、甲状腺機能を把握する上で有用。
副腎皮質刺激ホルモン (ACTH)
血漿ACTH濃度は下垂体からのACTH分泌能を反映し、その測定は、視床下部、下垂体、副腎皮質系の異常部位と、その程度を知るうえで重要であり、診断と病態の解明に不可欠である。
抗利尿ホルモン(AVP)
脱水・浮腫・多尿・多飲といった水代謝異常、あるいは高Na血症・低Na血症といったNa代謝異常時に、AVPの分泌異常の関与を明らかにするために測定する。
甲状腺ホルモンおよび結合蛋白
【主な検査項目】
トリヨードサイロニン (T3) 、サイロキシン (T4)
甲状腺機能亢進症およびその再発の早期発見、甲状腺機能亢進症の治療経過観察の指標となり、甲状腺機能の診断に有用です。トリヨードサイロニン (T3) とサイロキシン (T4)は、ともに合成されます。トリヨードサイロニン (T3) は、サイロキシン (T4) に比べて速効性で作用効果も大きく、生理的に重要な物質です。
副甲状腺ホルモン
【主な検査項目】
副甲状腺ホルモン (PTH)
生理活性を持つ Intact PTH のみに高い特異性を有し、 高感度であるため副甲状腺機能を正確に評価できる。
カルシトニン
カルシトニンは甲状腺髄様癌では異常高値となる場合が多く、肺癌などの悪性腫瘍でも高値となる場合があるため、腫瘍マーカーとしての有用性が認められている。また、骨塩量にも作用する事から高齢者の骨粗鬆症における重要性が示唆されている。
副腎皮質ホルモンおよび結合蛋白
【主な検査項目】
17-KS7分画
副腎疾患、特にCushing症候群の病因の探求や鑑別に、他の検査や血中11-OHCS、尿中17-OHCS測定などと相まって診断価値が高いことが認められている。また、酵素欠損による先天性副腎過形成の鑑別及び欠損酵素の判別にも役立つ。
コルチゾール
コルチゾールの分泌はACTHに支配され、下垂体・副腎系の判定指標となる。また、生体における最も重要な糖質コルチコイドであり、臨床上その血中濃度、分泌リズム、代謝等を知ることは、診断、治療に極めて有用である。
レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系
【主な検査項目】
アルドステロン
アルドステロンは、電解質の恒常性・循環血液量・血圧の維持に重要な役割を果たしています。原発性アルドステロン症をはじめとした高血圧疾患、腎疾患、浮腫性疾患などの診断と鑑別に有用です。
レニン濃度 (ARC)
レニンは電解質の恒常性、循環血液量、血圧の維持に重要な役割を果たしています。活性型レニン濃度の測定は、原発性アルドステロン症や腎血管性高血圧症などの二次性高血圧の診断と鑑別に有用です。
アンギオテンシンⅠ
腎血管性高血圧や低レニン性高血圧の診断や病態解明に有用であり、また併用してレニン・アンギオテンシン・アルドステロン系の測定が重要である。
副腎髄質ホルモン
【主な検査項目】
カテコールアミン総
尿中CAの測定は、褐色細胞腫および小児での神経芽細胞腫の診断治療経過観察に欠かせない検査である。また心不全、心筋梗塞、狭心症などの診断でも測定されている。
ドーパミン総
ノルアドレナリン、アドレナリンの上位のホルモンとして本態性高血圧等の解明や神経科領域における統合失調症や双極性障害などの精神疾患の治療で注目されている。
性腺・胎盤ホルモンおよび結合蛋白
【主な検査項目】
プロゲステロン
黄体機能不全、妊娠初期の診断、切迫流産の予後判定、胎盤機能の指標などに有力な方法であり、妊娠の成立及びその維持に重要なホルモンであり分娩発来にも役割を果している。
テストステロン
睾丸由来のテストステロンは胎生期初期に未分化性腺を男性型に分化誘導し、思春期男性における二次性徴の発育促進作用を示す。女子では、副腎と卵巣起源のアンドロステンジオンからの転換生成物として重要である。
絨毛性ゴナドトロピン(HCG)
妊娠の早期確認、流産、子宮外妊娠および絨毛性疾患の診断、治療効果および寛解の判定などの指標および、異所性HCG産生腫瘍のマーカーなどに有用である。
膵・消化管ホルモン
【主な検査項目】
インスリン
膵β細胞機能検査として重要であり、糖代謝異常を示す疾患(糖尿病、低血糖)の診断、鑑別、病態の解明などに広く用いられる。
膵グルカゴン
膵グルカゴンはインスリンとともに生体内の糖代謝調節において、重要な役割を担うと考えられている。
内分泌検査の注意点
ホルモンは精神的緊張、睡眠、血圧、性周期、妊娠、加齢、体位、水分・塩分摂取などの様々な影響を受けやすいと言われています。そのため、各種ホルモン分泌への影響を十分考慮して行う必要があり、患者は医師に体調について詳細に伝えることも大切です。また、血中ホルモン濃度は変動するため、血中ホルモン濃度の測定が1回だけだと正しい判断ができないこともあります。