1.検査法について
2.ウイルス分離検査について
3.髄液検査について
1.検査法について
Q1.
EIA法の値(EIA価)は、他の方法例えばHI法の値(HI抗体価)とどのような関係があるのでしょうか?
Q1.
ANSWER
EIA法とHI法で得られた値は、使用される抗原の質やその状態、反応様式の違いから、それらの意味するところに違いがあり、単純に換算することはできません。 最近急速に多方面で採用されておりますEIA法をご理解いただくための一助にと考え、連続的な値として得られますEIA値を任意に区切りをつけ、HI抗体価との比較でお示しいたします。
図-1
と
2
は、92年2月に当社社員(18-51歳、平均24歳)の協力 を得て採血しました100検体について、麻疹ウイルスに対する抗体価をHI価とEIA価(IgG)で測定した結果を示しました。
図-2
はEIA価を任意で区切ってあります。また、
図-3
に両法の結果の関係を示しました。
図-1
および
3
のHI抗体価で<8は“-”、8以上は“+”と判定されます。また、
図-2
および
3
のEIA価で2.0未満は“-”、2.0~3.9は“±”、4.0以上は“+”と判定されます。
両法の値を比較しました
図-3
で、両法の間にそれなりの相関関係が成り立っていることと、EIA法の方が感度が高いことが示唆されます。
EIA法に用いられている抗原は界面活性剤で可溶化されており、ウイルスの内部抗原も反応に関与しております。したがって、測定される抗体は、抗原として活性を保っているウイルスの複数成分に対するものです。一方、HI法では完全粒子が使われるため、関与する抗体は、ウイルス表面抗原に対するものだけです。これに加えて、前者では生成された抗原抗体複合物を検出するための試薬も増強されております。以上のような要素の違いなどが、感度の違いや検査法自身の特性になっていると考えられます。
*お問い合わせは、ウイルス検査課 TEL 0426-48-4018 までお願いします。
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Q2.
ウイルス感染症の診断法として、PCR法はどのような場合に用いるべきでしょうか?
Q2.
ANSWER
PCRは迅速性、検出感度、特異性に優れており、ウイルス遺伝子を標的としていることから、細胞培養系の確立されていないウイルス(ヒトパルボウイルスB19、HCVなど)、あるいは培養してから検出できるまでに時間がかかるウイルス(風疹ウイルスなど)の検出に有用であると考えられます。また、検査の立場から考えますと、病原ウイルスの分離培養をする際、感染の危険性ウイルス(HTLV-1、HIVなど)にも、PCR法は感染性ウイルスを増殖させる必要がないため、より安全性が高いと思われます。さらに、従来法では検出感度が悪いため診断がつかないことがある場合、例えばモノクローナル抗体を用いたIFA法(またはEIA法)や標識プローブを用いたdotblot hybridization法では検出できなかった場合に、それに代わる方法としてPCR法は高感度であるという点で有用です
(表1)
。
ただし、PCR法にも問題点があります。コンタミネーションにつきましては言うまでもありませんが、コンタミネーションがなかったと仮定して問題となることは、PCR法で陽性になった場合、高感度であるため極めて少ないウイルス粒子数(またはウイルス遺伝子コピー数)でも検出されてしまい、臨床像と一致しないことが少なくないようです。実際、PCR法で陽性の患者ペア血清を検査したところ、有意な上昇が認められなかったという問い合わせをお受けしたことが何度かありました。あるいは、医療効果をモニターする上で、臨床所見が寛解しても病因ウイルス遺伝子が検出されるというケースの問い合わせもありました。特に、ヘルペス属ウイルスの場合に多く、中でもCMVが目立ちます。これは、感染後生体内に潜伏感染し、ときに健常人でも唾液中などに排出されており、通常のPCR法で検出されてもたまたまそこに存在していただけなのか、患者の原因ウイルスであるかを区別するのは困難だと考えられます。最近、さまざまな研究者がウイルス感染症におけるPCR法の診断的意義について報告しています。それらの報告によりますと、①感染局所を検査材料にする。②定量的な判定をする。③ウイルス特異的m-RNAを検出する。以上の見解が主流になってきているようです。今後それらの検討およびデータの蓄積が必要であると思われます。現状では、PCR法はウイルス感染症の診断法としては極めて有用な情報を与えてくれますが、その検査結果のみで判定することは難しいようです。そのため、PCR法を実施するとともに、ウイルス学的検索(ウイルス分離培養、ウイルス特異的IgMの検出、ペア血清によるウイルス抗体価の有意上昇の確認)を行い、総合的な判断が必要であると思われます。
*お問い合わせは、感染症特殊検査課 TEL 0426-48-4082 までお願いします。
表1アデノウイルス8型標準株におけるPCR法の検出感度
PFU
10
3
10
2
10
1
10
0
10
-1
10
-2
10
-3
EIA
+
-
-
-
-
-
-
PCR
+
+
+
+
+
+
+
アデノウイルス8型を用いたプラック定量法、EIA法およびPCR法の検出感度を比較したところ、PCR方が最も高い検出感度でした。ただし、この検討結果におけるPCR法で検出されたアデノウイルスは、不完全粒子や感染細胞中のウイルスDNAも含まれており、培養法よりも検出感度が高いことは、当然の結果であると思われます。
◆
:
PFU
/0.1ml;出発材料(103PFU/ml)を10倍段階希釈したもので、0.1mlに含まれる理論上の感染性ウイルス粒子数
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Q3.
ポリオウイルスは1、2、3型がありますが、抗体検査では何型を調べたらよいでしょうか?
Q3.
ANSWER
ポリオウイルスの抗体検査には、中和反応(NT法)と補体結合反応(CF法)があります。NT法はウイルス液と抗体(被検血清)を反応させ、反応後のウイルスの感染性を感受性細胞を用いて測定する方法で、感染防御のための抗体を直接測定でき、感度・型特異性が高い測定方法です。一方、CF法はウイルス抗原と抗体(被検血清)を反応させた後、一定の補体を添加し抗原ー抗体ー補体を結合させ残存補体を定量する方法で、群特異性が高く比較的早期に抗体が消失するため、感染のスクリーニングに適する測定方法です(図1参照)。したがって、検査の目的によって検査法を選択することになりますが、乳児期にワクチン接種済である成人の抗体有無を調べるためには、NT法が有用です。また、ポリオウイルスワクチンは1、2、3型の混合ワクチンであり、ポリオウイルスはどの型でも同様に病原となるため、抗体検査では全ての型の検査が必要です。
図2にはポリオウイルスの我国における年令別中和抗体の保有状況を示しました。2型は全年齢を通じて100%近い高率を示していますが、1型と3型は60~80%程度の抗体保有率です。特に1975年から1977年生まれの人の1型の保有率は低くなっています。これらの人達は、自分の子供がポリオウイルスワクチンを服用する時、あるいはポリオウイルスの流行地へ渡航する時に感染の危険性があるため、厚生省からは平成8年、これらの人達がポリオウイルスワクチンを服用できる機会を確保するように、通知が出ました。尚、この件に関する詳しい情報についてはLABEAM1997Vol.9 No.3をご参照ください。
図1)抗体応答
図2)
出生年別ポリオ抗体保有状況(1991~94年度伝染病流行予測調査)
病原微生物検出情報Vol.18No1/1997
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Q4.
HTLV-Ⅰ抗体検査の進め方について
Q4.
ANSWER
ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-Ⅰ)は、成人T細胞白血病(ATL)やHTLV-Ⅰ関連脊髄症(HAM)、慢性肺疾患、関節炎の原因ウイルスとして知られています。このウイルスの感染診断法としては、ウイルスないしウイルス抗原の検出、ウイルス核酸の証明、抗体の検出等がありますが、この内、抗体検査は臨床的に最も広く用いられている診断法です。
HTLV-Ⅰ抗体の検査をする場合には、まず抗体スクリーニング検査(ゼラチン粒子凝集法:PA法、化学発光酵素免疫測定法:CLEIA法 等)を行います。結果が陰性の場合、HTLV-Ⅰ
の感染は無いと判断できますが、必ずしも感染を否定するものではありません。
陽性もしくは判定保留となった場合は、次のステップとして確認検査(ウエスタンブロット法:WB法)に進みます。確認検査で陽性となった場合、”HTLV-Ⅰ
に
感染している”と判断できます。ただし、WB法での判定保留は 10~20%程度発生することが知られています。また、感染者であってもスクリーニング検査で陽性、WB法で陰性となることがあります。
この際の補助検査としてプロウイルスを検出するPCR法や、採血時期をずらして再度検査を実施して確認する事が重要です。
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