感染症検査統計情報サービス
    感染症検査統計情報について ご利用にあたって

クラミジアトラコマチスおよび淋菌 part1
~全年齢を対象した検査の集計結果から推測されること~

 
  クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis )とは?
  淋菌(Neisseria gonorrhoeae )とは?
  全国から弊社に依頼されたCTおよびNG遺伝子検査の集計結果から推測されること
  検査項目別にみた男女別CTおよびNG陽性率推移
  男女別CTおよびNG重複陽性率(泌尿器、生殖器材料:TMA)
  女性の咽頭材料におけるCTおよびNG陽性率推移(TMA)
  さいごに
  検査受託要綱
  検査Q&A
   
 クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis :以下CT)とは?
  CTは、わが国で最も多い性感染症の病原微生物 のひとつです。
男性では尿道炎、副睾丸炎、前立腺炎等を、女性では子宮頸管炎、子宮内膜炎、卵管炎等の原因のほか、産道感染により新生児に肺炎、結膜炎などを引き起こすことが知られています。女性の子宮頚管炎や子宮付属器炎などでは自覚症状が乏しい場合が多く、診断できず治療に至らないこともあります。 また、口腔性交による咽頭感染も報告されています。


 
 淋菌Neisseria gonorrhoeae :以下NG)とは?
 

NGは、性感染症の病原微生物 のひとつです。NGは弱い菌で、患者の粘膜から離れると数時間で感染性を失い、日光、乾燥や温度の変化、消毒剤で簡単に死滅します。そのため、性行為や性交類似行為以外で感染することは稀であるとされています。
男性のNGによる尿道炎は排尿痛などの自覚症状を伴い発症しますが、最近では典型的な症状ではなく、無症状に経過することも報告されています。女性では主に子宮頚管炎を引き起こしますが、男性より症状が軽くて自覚されないまま経過することが多く、また、上行性に炎症が波及していくことがあります。近年、抗菌薬に対する感受性の著しい低下が報告がされています。

 


Topへ戻る
   
   

 
  
 

~2007/7から2010/9の集計結果より~(2010年日本性感染症学会弊社発表資料より)~

 全国から弊社に依頼されたCTおよびNG遺伝子検査の集計結果から推測されること
 

2007年7月から2010年9月までの弊社依頼検体を1~3月、4~6月、7~9月、10~12月の4期間に分け、検査法別に集計しました。

 検査項目別にみた男女別CTおよびNG陽性率推移

  弊社で実施しているCTとNGに対する遺伝子検査には、淋菌およびクラミジアトラコマチスrRNA同時同定(TMA法;以下TMA)、クラミジアトラコマティスDNA(PCR法;以下CT PCR)、淋菌DNA(PCR法;以下NG PCR)があります。
CT、NG遺伝子検査の陽性率推移を項目別、男女別に集計しました(図1)。

CTの陽性率は男女共にTMAが高い結果となりました。NGの陽性率は、男性においてはTMAとPCRは同等でありましたが、女性においてはPCRがやや高い結果となりました。CTにおいては標的遺伝子がPCR(プラスミドDNA)とTMA(23S rRNA)とで異なるためTMAの結果が高くなったと考えられます1)
淋菌においては標的遺伝子が両方法ともに16S rRNAであるため、ほぼ同等の結果が得られると思われますが2)、女性においてPCRが高い結果となったことについては不明です。その要因として、TMAでは淋菌感染の疑いが無い場合でもCTとNGを同時に測定します。それに対し、PCRは単独検査であり、淋菌感染を疑う場合に測定するため、この様な結果が得られたとも考えられます。

男女を比較するとCT・NGとも男性の陽性率に比べ女性では低くなりました。男性では自覚症状があって検査する場合が多いと考えられるため、CT・NG(20~30%)ともに高く、一方女性では妊婦健診でのスクリーニング検査が多いと考えられるため、低くなった(CT:5~10%、NG:2~3%)と推察されます。

TMAにおける男女別CT陽性率の推移をみると、女性におけるCT陽性率は10.4%を示した2007年以降、年々緩やかに低下する傾向が認められました。
男性においてはCTおよびNG共にほとんど変動が認められませんでした。女性のCT陽性率は全期間を通じて、男性より低い結果となりました。図には示していませんが女性のCT陽性数は男性の約1.6倍ほど多い結果となりました。NGにおいては、男性の陽性率と陽性数が共に高い結果となりました。



図1.検査項目別にみた男女別CTおよびNG陽性率推移
 
   
Topへ戻る
 男女別CTおよびNG重複陽性(泌尿器、生殖器材料:TMA)
以降の集計結果は、CTとNGを同時に比較できるTMAを用いました
CT
およびNGの重複陽性率を男女別に示しました(図2)。重複感染率は平均で男性11.4%、女性6.6%でした。

   
図2.CT陽性者およびNG陽性者からみた男女別重複陽性率(泌尿器、生殖器材料)

 
 
  次に、CTまたはNG陽性者からみた重複陽性率を集計しました(図3)。
男性ではCT陽性者からみた重複陽性率は21.2%、NG陽性者からみた重複陽性率は24.5%とほとんど差はありませんでした。女性では、CT陽性者からみた重複陽性率は8.1%、NG陽性からみた重複陽性率は34.5%となり、NG陽性者における重複陽性率が高い結果となりました。この結果からCT単独検査ではなくNGも同時に検査することが重要と思われます。

   


図3.CT陽性者またはNG陽性者からみた男女別重複陽性率(泌尿器、生殖器材料)
   
Topへ戻る
   
 女性の咽頭材料におけるCTおよびNG陽性率推移(TMA)

女性の咽頭材料でのCTおよびNGの陽性数と陽性率推移を集計しました。尚、男性は依頼数が少ないため除外しています。咽頭材料での検査対象となる母集団の背景が不明ですので参考としてデータを示しますが、平均陽性率はCT5.5%、NG8.3%となりました。

近年、性行為の多様化により口腔性交によるCTおよびNGの咽頭への感染者増加が懸念されていますが、その中でも性産業従業女性(CSW)では性器より咽頭から検出される率が高く、そのことから男性の淋菌性尿道炎の約半数以上はCSWの咽頭が感染源であると指摘されています。
CTおよびNGの
咽頭感染者の多くは無症状・無症候であり、それが感染蔓延の一因であると推察されるため注意が必要です。参考資料)

尚、咽頭検体での材料については2009年10月に保険が追加適用されています。
また、
2011年の日本性感染症学会ガイドラインでは咽頭スワブに比べ患者負担の少ない口腔内うがい液(保険未収載)が推奨ランクAに上げられました。

参考資料:性感染症 診断・治療 ガイドライン2011 日本性感染症学会誌,Vol22,No.1 Supplement

   

図4.女性の咽頭材料におけるCTおよびNG陽性率推移
   
   
Topへ戻る
   
 さいごに

妊婦健診が多くを占めると思われる女性のCT陽性率はTMAおよびPCRで5~10%となりました(図1.CT女性のグラフ参照)。その頻度は低いとはいえ母子感染の危険性が示唆されます。そこで次回のClose-upでは今回に続き、クラミジアおよび淋菌のpart2として小児年齢を対象した集計結果を報告したいと思います。

   
   
   参考文献
1)Ikeda Dantsuji Y. et al : J. Med. Microbiol. 54 : 357-360,2005. 
2)松田静治他:Transcription-Mediated Amplification法を用いたRNA増幅によるChlamydia trachomatisおよび
Neisseriagonorrhoeae
の同時検出:日性感染症会誌vol.15,No.1 2004 


Topへ戻る

   
  検査受託要綱
検査には抗体検査および抗原検査、遺伝子検査があります。
 抗体検査
      クラミジアトラコマティスIgG  クラミジアトラコマティスIgA  クラミジアトラコマティスIgM
     
   抗原検査
      クラミジアトラコマティス抗原
 
 遺伝子検査
      淋菌およびクラミジアトラコマチスrRNA同時同定(TMA)
      淋菌およびクラミジアトラコマチスDNA同時同定(リアルタイムPCR)
      クラミジアトラコマティスDNA(リアルタイムPCR)  淋菌DNA(リアルタイムPCR)
      クラミジアトラコマティスrRNA  淋菌rRNA
     


Topへ戻る
 

検査Q&A
   抗原検査や遺伝子検査はそれぞれに専用容器がありますが、専用容器以外で検査はできますか?
  

  淋菌およびクラミジアトラコマチスrRNA同時同定(TMA)、淋菌およびクラミジアトラコマチスDNA同時同定(リアルタイムPCR)は、それぞれに専用容器があります。専用容器以外では検査できません。また、検査材料別に容器が異なりますのでご注意ください。
クラミジアトラコマティスrRNA、淋菌rRNAは専用容器(W4)以外では検査できません。
クラミジアトラコマティス抗原(EIA)は専用容器(W9)以外では検査できません。
     
     
   診療報酬点数表に収載されている検査材料以外での検査はできますか?

  診療報酬は検査ごと、検査材料ごとに定められています。ここでは、弊社検査受託要項の項目を対象とします。以下、添付文書に記載されている使用目的と診療報酬点数表に記載されている注釈の抜粋です。

●クラミジアトラコマティスDNA(リアルタイムPCR)、淋菌DNA(リアルタイムPCR)
淋菌およびクラミジアトラコマチスDNA同時同定(リアルタイムPCR)
添付文書記載
・尿、子宮頸管擦過物又は咽頭検体(うがい液を含む)

診療報酬点数表
・泌尿器、生殖器又は咽頭からの検体によるものである。ただし、男子尿は含み女子尿は含まない。なお、咽頭からの検体も算定できる。


●クラミジアトラコマティス抗原(EIA)
添付文書記載
・泌尿器、生殖器、鼻咽腔または結膜からの検体及び男子初尿

診療報酬点数表
・泌尿器、生殖器、結膜又は鼻咽腔内からの検体によるもの、ただし、結膜又は鼻咽腔内からの検体によるものは、封入体結膜炎若しくはトラコーマ又は乳児クラミジアトラコマチス肺炎の診断のために実施した場合に算定できる。


●淋菌およびクラミジアトラコマチスrRNA同時同定(TMA)
添付文書記載
・男子初尿、子宮頚管擦過物、男性尿道擦過物又は咽頭擦過物

診療報酬点数表

・泌尿器又は生殖器からの検体によるものである。ただし、男子尿は含み、女子尿は含まない。なお、咽頭からの検体も算定できる。


●クラミジアトラコマティスrRNA
添付文書記載
・男子尿道由来又は女子子宮頚管由来の擦過物

診療報酬点数表

・泌尿器又は生殖器又は咽頭からの検体によるものである。


●淋菌rRNA

添付文書記載

・ヒト分泌物

診療報酬点数表
泌尿器又は生殖器又は咽頭からの検体によるものである。


これ以外の組み合わせですと、指定外材料として扱い、参考値として報告させていただきます。ただし、指定外材料では検査できない項目もありますので弊社、営業所または、データインフォメーションにご確認下さい。
         
         


Topへ戻る
 

お問い合わせはこちらまで

 当サイトを最後までご覧いただきましてありがとうございました。

 内容に関するご意見、ご要望、ご質問、その他等がございましたらお気軽にお問い合せください。
尚、お問い合わせは会員専用サイト「SRL.info」にて登録、ログイン後にここ”メッセージを送るをクリックしてメッセージを記入し、送信してください。


 先生方のお声を反映させ、
さらに充実した内容となるよう編集委員一同努力して参ります。今後とも引き続き当サイトをよろしくお願いいたします。

 


Topへ戻る
 

 
Copyright(C) 2004 SRL,Inc. All rights reserved.