感染症検査統計情報サービス
2011/11   感染症検査統計情報について ご利用にあたって サイトマップ
 
   風疹の患者数が増加しています。
-目次-
感染症発生動向調査 2011年8月現在
2011年の風疹ウイルスIgM抗体陽性率の推移
年齢別、男女別での特徴
近年の風疹流行の特徴
検査受託要綱
検査Q&A
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感染症発生動向調査
風疹は、トガウイルス科ルビウイルス属の風疹ウイルスによる感染症で、発熱、発疹、頸部リンパ節腫脹が3主徴である。症状がそろわない例や、麻疹や伝染性紅斑と似た症状を示す場合があり、確定診断には検査診断が必要です。一般に予後良好ですが、脳炎や血小板減少性紫斑病、成人では一過性の関節炎を合併する場合があります。妊娠初期に風疹ウイルスに感染すると、白内障、先天性心疾患、難聴を主症状とする先天性風疹症候群(CRS)の児が生まれる可能性があり、胎児死亡の報告もあります。

2011年は7年ぶりに地域流行が見られており、風疹もCRSも、特異的な治療法はないことから、ワクチンによる予防が最も重要です。

2008年以降の報告患者803例中検査診断例は492例でした。臨床診断例の割合が54%と多かった2008年は麻疹が流行中で、麻疹が紛れ込んでいた可能性があります。

患者の年齢は、2008年は0~4歳が最多でしたが、2011年は成人が全体の81%を占めます。特に20~40代が多く、性比3.1(20~40代4.2)と男性が多い結果となっています。

CRSは1999年4月から、急性脳炎は2003年11月5日から5類全数把握疾患とされ、2011年8月までにCRSが19例、風疹脳炎が1例(2008年に40代男性)報告され ました。CRS 19例のうち母親の予防接種歴が記録で確認されていたのは1例のみでありました。13例は母親の妊娠中の風疹罹患歴が有り、4例はありませんでした。2005年以降のCRS 5例中3例の母親が海外で感染していたのが目立ちます。

 

   
   出典:国立感染症研究所感染症情報センター病原微生物検出情報月報 Vol. 32, №9(№379),
p 250-252,2011年9月号 「特集 風疹・先天性風疹症候群 2011年8月現在」より抜粋


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感染症検査統計情報サービス  


  2011年度の風疹ウイルスIgM抗体陽性率の推移
    弊社依頼検体の風疹ウイルスIgM抗体陽性率の推移を集計しました。

青の折れ線グラフは男性、赤の折れ線グラフは女性での陽性率を表しています。一方、 黒色の折れ線グラフは国立感染症研究所感染症情報センターから報告された感染症発生動向調査の患者報告数の推移です。1993年から1998年頃までは毎年、定期的な流行がありましたが、1999年頃より大きな動きは認められません。

IgM抗体は感染の急性期に出現する抗体であり、感染症発生動向調査の患者報告数の変動と同様に推移し、流行 の指標のひとつになると思われました。特に感受性者が一定の割合で存在する男性の陽性率は患者報告数のピークとも良く一致し、流行を反映している事が分かります。

 そこで、男性の陽性率を示す青の折れ線グラフに注目すると、2002年4月から6月に7~8%と上昇した翌2003年から2004年にかけて流行が見られました。2005年以降の陽性率は2.06.1%で推移しましたが、2011年6月に陽性率が11.0%と上昇しました

   

 



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年齢別、男女別での特徴
 

風疹ウイルスIgM抗体陽性率の推移をみると2008年以降に目立った上昇は見られませんでした。男女別の各年齢層においても27%での低い陽性率で推移していました。2011年に入り8月までの陽性率は20歳代、30歳代にかけての男性の陽性率が12%と高い傾向が見られましたが、小児や女性ではこの様な傾向は見られませんでした。 これは、病原微生物検出情報感染症発生動向調査にある”感染流行予測調査”における抗体保有状況と良く合致しています。

 
   

感染症流行予測調査
 
2010年に全国15の地方衛生研究所の協力を得て、約5,000人の健常人を対象に風疹の赤血球凝集抑制(HI)抗体価が測定されています。1977~1994年は女子中学生を対象に風疹の定期接種が実施されていたため、2010年度に30~40代の女性のHI抗体保有率は90~95%であったが、男性は70~80%と低く、2011年の流行はこの年齢層の男性を中心に発生しています。
 
  出典:国立感染症研究所感染症情報センター病原微生物検出情報月報 Vol. 32, №9(№379),
p 250-252,2011年9月号 「特集 風疹・先天性風疹症候群 2011年8月現在」より抜粋




近年の風疹流行の特徴
 


近年の特徴として海外での感染例からのCRSも報告されています。同時に、海外で流行している遺伝子型が国内で検出されている事から国内で拡がり定着した可能性を指摘する報告もあります。

 


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検査受託要綱
  検査には抗体検査、ウイルス分離・同定検査があります。
   抗体測定検査
     風疹ウイルス IgM (EIA)  風疹ウイルス IgG (EIA)  風疹ウイルス(HI)
   ウイルス分離・同定検査
     分離  同定


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検査Q&A
  風疹ウイルスのIgM抗体は、感染からどのくらいの時期に検出されますか?また、何ヶ月くらいまで検出されるのでしょうか?IgM抗体が長期間検出される場合はどのように判断すればいいでしょうか?

 

   

風疹ウイルスIgM抗体は急性期の非常に早い時期では70%程度、第3病日以降では100%程度が陽性を示すと言われています。弊社で使用している測定キットでは、gM抗体の検出期間は最短で40病日、最長で400病日、平均で約100病日との報告があります。しかし、IgM抗体の推移は個人差があり、長期間にわたり検出されるケースもあるため、結果の解釈には注意が必要です。この様な場合は経時的に抗体を測定し、判断することが重要となります。特に妊婦においては既往歴、ワクチン接種歴、臨床症状、地域・家庭での流行状況、他の検査法などを考慮して総合的に判断することが望ましいと考えます。

   

参考文献:「風疹IgM抗体測定キットの改良について」臨床とウイルス 23(1), 44-47, 1995-03-30

     
 

妊婦の検診で風疹抗体を測定しますが、どの検査法で実施するのが望ましいですか?また、結果の判断、検査のすすめかたも教えてください。

 

    2004年に厚生労働省研究班から「風疹流行および先天性風疹症候群の発生抑制に関する緊急提言」が発せられました。この中にある妊娠女性への診療対応の“概略フローには、妊娠中の発疹の有無と風疹患者との濃厚な接触があったかについて問診し、いずれもなければHI抗体を測定します。いずれかに該当する場合は、ペア血清でHI抗体及び風疹IgM抗体を測定します。(1~2週間間隔で2回測定) その後の結果の判断や検査の進め方については詳細な診療対応の概略フロー図が風疹流行および先天性風疹症候群の発生抑制に関する緊急提言(p10~p14)に記載されているので参考にして下さい。
     
  風疹ウイルスで、抗原検査は何ができますか?抗原検査に適している臨床材料は何ですか?
 
    風疹ウイルスの抗原検査にはウイルス分離・同定検査があります。

検査材料は臨床症状が紅斑性発疹症では咽頭ぬぐい液等、先天性異常を疑う場合の材料は咽頭ぬぐい液、髄液、尿等が適します。尚、検査材料は発病後できるだけ早期に採取することが大切です。検査材料の選択は、分離率向上のため、できる限り複数の材料をご提出ください。項目についての詳細は 分離  同定を ご参照ください。
PCR検査は実施しておりません。


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