感染症検査統計情報サービス
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麻疹ウイルスIgM抗体とパルボウイルスB19IgM抗体の交差性
  臨床的に麻疹が疑われたり、麻疹ウイルスIgM抗体が陽性となっても麻疹ではない場合があ ります。WHOは麻疹の診断に麻疹ウイルスIgM抗体の検査を推奨していますが、麻疹以外の疾患の急性期に出現するIgM抗体が交差反応を起こす場合があることがわかってきました。厚生労働省 、文部科学省からも平成22年12月に「麻疹と臨床診断したら、検査診断を!麻疹は全例、PCR法等によるウイルス検出を!」と注意喚起されています。今回、JA静岡厚生連静岡厚生病院小児科 田中敏博先生のご協力により麻疹ウイルスIgM抗体とパルボウイルスB19IgM抗体の交差性が明らかとなりました。以下に、その結果を示しました。また、伝染性紅斑だけではなく、突発性発疹(HHV6感染)やデング熱などでも麻疹 ウイルスIgM抗体が陽性となる症例があることが報告されています。
2010年春、静岡市で麻疹は流行したのか?
1 JA静岡厚生連 静岡厚生病院 小児科  2 株式会社エスアールエル 感染免疫部
○田中 敏博1  小栗 泉1  川出 博江1  藤巻 陽子2  柴田 浩治2
《目的》
麻疹ウイルスの血清IgM抗体価(EIA法)が、伝染性紅斑の患者において陽性となることがあるのかどうか、明らかにする。
《方法》
対象は当科を受診し、臨床的に診断された成人の伝染性紅斑の患者(文書で同意を取得)
対象患者より血液を採取し、パルボウイルスB19と麻疹ウイルスの各々について、ウイルス遺伝子(PCR法)とIgM抗体価(EIA法)を検索した。
これらの検査は株式会社エスアールエルに依頼した。
一部の患者では麻疹の疑いにつき、咽頭ぬぐい液も採取して、血液とともに静岡市保健所を介して静岡市環境保健研究所に送付、各々のウイルス遺伝子(PCR法)の検索を行った。
本研究は、当院の倫理委員会に審議を諮り、承認を受けている。
《結果》
6症例の内訳

症例5:31歳、女性
現病歴:
7/17 頭痛、微熱
7/18 倦怠感
7/19 四肢に発疹、下肢に掻痒感
7/20 顔面にも発疹
家族歴:
7/1~ 第一子が「りんご病」
7/12~ 第二子に発疹が出現


[判定基準] A社: 0.80未満で陰性、B社: 0.100未満で陰性、C社: 0.9未満で陰性

《結論》
麻疹ウイルスIgM抗体(EIA法)は、伝染性紅斑の患者において偽陽性となり得る。
2010年春の静岡市における麻疹の報告例は、伝染性紅斑の流行下の誤診であった可能性が高い。
麻疹排除の目標に向けては発生患者数の正確な把握が不可欠であり、流行期ではない我が国の現状では、ウイルスを直接検出する方法に基づいて確定診断を行っていくべきである。
2010年11月11日、厚生労働省は、麻疹の届け出の際、保健所などを通じて可能な限り遺伝子検査を行うよう、自治体に課長通知を発出した(「麻疹の検査診断について」(健感発1111第2号))。
   
 
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