宮チ地ト人3 2023年 新渡戸文化短期大学学長ミヤハヤ 健康管理や患者診療に利用される医学的情報には大きく3つある。すなわち、①問診から得られる「病歴」、②診察から得られる「身体所見」および③臨床検査等の「検査所見・データ」である。その中で、臨床検査は最も重要な情報とされる。その利点は、①客観性が高い、②情報量が多い、③身体内部の変化を把握できる。一方、検査データは不安定で不正確になりやすい。その理由は、複雑な要素とプロセス(測定前~測定~測定の3つのプロセス)から構成され、検査データは以下の影響で変動する。すなわち、①測定方法の違い(施設によって)、②測定方法の変化(検査室内)、③測定試薬の変化(劣化やロット間差)、④測定装置の故障・トラブル、⑤測定者の訓練・資質などの影響を受ける。これらの影響を回避し、正しい検査データを得るには、その精度(品質)を管理するための精度管理の活動が鍵を握る。その活動には、検査室内部の活動による「内部」精度管理、外の施設(検査室)との比較による「外部」精度管理調査の2つがある。両者によって、検査データの精確さ、すなわち再現性・精密度(ばらつきの小さい度合い)と正確度(偏りの小さい度合い)が確保され、正しい診断と経過観察が可能となる。 本講演では、健康や診断の鍵を握る検査の精度(品質)管理の役割を理解するため、健康診断に用いる血液検査や新型コロナウイルス感染症のPCR検査を例に精度管理の基本と実際を解説する。主な研究領域遺伝子検査学、感染制御学、血液診断学(造血器腫瘍の形態診断)、白血病治療学(治療抵抗性の分子機構)主な著書「遺伝子関連検査の精度の確保に係る環境・体制整備:外部精度管理調査の恒常的組織の構築構想」(日本臨床検査医学会雑誌2023; 71(6): 400-5)「国際規格1SO 15189の改定(第4版)と臨床検査室の備え」(日本臨床検査医学会雑誌2023; 71(8): 540-3)「がん遺伝子パネル検査を実施する臨床検査室のISO 15189認定の取り組みと課題対応」(日本臨床検査医学会雑誌2023; 71(9): 635-40)「検査の精度管理. 庄林督章、和田耕治編. 新型コロナウイルス感染症 対応記録」(一般財団法人 日本公衆衛生協会. 社会保険研究所; 東京. 2023; 259-62)「ウイルス診断の課題と将来への提言(将来のパンデミックに備え)」(日本内科学会雑誌2021; 110(9): 2095-98)1981年 慶応義塾大学病院臨床研修医1984年 慶応義塾大学医学部内科学教室(血液内科)助手1984年 水戸赤十字病院内科医員1987年 米国シティオブホープ国立医療センター研究員1990年 東海大学医学部臨床病理学(現基盤診療学系臨床検査学)助手1995年 同准教授2004年 東海大学医学部基盤診療学系臨床検査学教授2022年 新渡戸文化短期大学副学長、臨床検査学科教授東海大学名誉教授 勇新渡戸文化短期大学 学長・教授東海大学 名誉教授健康の鍵を握る!検査の精度(品質)
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