妻キ木行5ツマノリユキ 頭骨と鎖骨の一部を除き、全身のほとんどの骨格は軟骨を経て発生する。軟骨は生後も成長軟骨と関節軟骨として骨格に残り、前者は骨の伸長を、後者は骨の端を覆って滑らかな関節運動を担う。関節軟骨の損傷・変性は関節の機能障害と疼痛を起こす。そして軟骨は修復能に乏しいため、変性が進み変形性関節症へ至ることが少なくない。試験管内で軟骨を作って損傷・変性部へ移植する再生治療は、関節軟骨損傷を根治的に治す方法の一つになりうる。我々は軟骨発生の研究において、軟骨特異的コラーゲン遺伝子の転写制御と、軟骨形成に必須の細胞シグナルを解析した。人工多能性幹細胞(iPS細胞)は初期胚の内部細胞塊の性質をもつため、発生過程の知見を利用して任意の組織/臓器細胞を大量に作る材料になる。我々は軟骨特異的コラーゲン遺伝子のプロモーター活性をレポータに利用し、iPS細胞から発生過程を追って軟骨を作る方法を開発した。そして、iPS細胞由来軟骨の有効性と安全性を非臨床試験で検証し、膝関節軟骨損傷を持つ患者に移植する臨床研究を行っている。このように、軟骨の発生研究で得られる知見を応用して、再生治療の臨床応用を目指す研究開発を紹介する。主な研究領域骨軟骨代謝学、再生治療学主な著書「iPS細胞を用いた骨軟骨再生」最新関節リウマチ学(日本臨床)「関節軟骨の修復と再生」標準整形外科(医学書院)「関節軟骨の再生医療」今日の整形外科治療指針(医学書院)「軟骨」iPS時代の幹細胞最前線(化学同人)1989年 大阪大学医学部卒業1989年 大阪大学医学部整形外科入局1992年 大阪大学大学院医学研究科博士課程1996年 米国国立保健研究所(NIH)Visiting Fellow1998年 大阪大学医学部整形外科助手1999年 大阪警察病院整形外科副医長2002年 大阪大学大学院医学系研究科整形外科助手2007年 同骨・軟骨形成制御学独立准教授2011年 京都大学iPS細胞研究所教授2021年 現職大阪大学大学院 医学系研究科/ 生命機能研究科 組織生化学研究室 教授 範軟骨発生研究と 骨格疾患の再生治療
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