第43回 再生医療の最前線
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ナカムラ “中枢神経である脊髄は一度損傷を受けると二度と再生しない”と長きにわたり信じられてきた。しかし近年の神経科学の進歩によりその通説が覆されようとしている。本シンポジウムでは、これまで我々が行ってきたiPS細胞由来神経幹細胞(iPS-NSC)を用いた脊髄再生の橋渡し研究と臨床研究について紹介する。 亜急性期完全脊髄損傷に対するiPS-NSC移植:前臨床研究にて安全性・有効性を確認したiPS-NSCを用いた臨床研究の申請を行い、2019年2月に厚生科学審議会で承認された。新型コロナ感染の拡大を受けて開始を見合わせていたが、2021年10月より患者リクルートを再開し、同年12月に世界初となる細胞移植を実施した。本臨床研究の現状と今後の展望に言及する。 慢性期不全脊髄損傷に対する脊髄型iPS-NSC移植:慢性期不全脊髄損傷では脱髄された残存する軸索を治療の標的として、オリゴデンドロサイトへの高い分化能を有する脊髄型iPC-NSCの誘導法を確立し、前臨床研究を行ってきた。その結果、従来のiPS-NSC移植単独では機能改善が厳しかった慢性期脊髄損傷において、脊髄型iPS-NSC移植単独でも機能改善が得られることを明らかにした。この結果を受けて、AMED再生医療実用化研究事業に採択され、2024年の慢性期脊髄不全損傷に対する医師主導治験を計画している。その準備状況と、さらに慢性期完全脊髄損傷に向けた我々の取り組みを紹介したい。主な研究領域脊椎脊髄外科・神経科学・再生医療・iPS細胞121987年 慶應義塾大学医学部卒業1998年 米国ジョージタウン大学客員研究員2000年 慶應義塾大学医学部助手(整形外科学)2004年 慶應義塾大学医学部専任講師(整形外科学)2012年 慶應義塾大学医学部准教授(整形外科学)2015年 慶應義塾大学医学部教授(整形外科学)2017年 慶應義塾大学医学部医学部長補佐2021年 慶應義塾大学医学部副医学部長慶應義塾大学医学部 整形外科学教室 教授マサ 雅中村ヤ也私たちが目指す 脊髄再生医療とは

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