第43回 再生医療の最前線
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エ江藤ジ之トウコウ主な研究領域血液学、幹細胞生物学主な著書Platelets 4th Edition (Alan Michelson, Marco Cattaneo, Andrew Frelinger, Peter Newman 監修) “Stem cell-derived platelets” セクション(2019年刊行)日本内科学会雑誌 第111巻 第9号“生体外血小板製造システムの発展” 各種の未来予測の中で最も影響しそうな数字は、2050年の労働人口(20〜60歳)の極度の減少で、この数字はずばり献血可能人口を示している。新型コロナ感染症に伴うパンデミックを差し引いても、現在の血小板献血人口は不足傾向にあり、献血適応層の拡大が進められている。ノブレス・オブリージュだけに依存するシステムからの変革は、50年先までを見据えて準備する必要があることから、私たちはiPS細胞を材料に人工血小板の開発を進めて来た。血小板は、有効期限が短く(4日)、1回の標準輸血量が2,000〜3,000億個であることから、人工的、人為的に製造することは到底不可能と考えられていた。大量に、かつ機能する血小板を製造可能であること、そしてそれが実際に患者(被験者)に使用可能であることを実証することが最初の目標となり、現在に至っている。当日は、製造原理の根拠になった基礎研究データから臨床試験までの道のり、製造コストを削減するための今後の戦略に関して、紹介する。 先日、「50年後への種蒔きの話」という題目の桃野泰得氏のブログ#を拝読した。日本統治時代の台湾の民政長官になった後藤新平が掲げた“アヘンの製造・流通を政府の厳しい管理下に置き、50年かけて根絶する”話の中で、桃野さんは、【社会を変えるほどの大きな仕事とは、10年後、20年後、時には50年後の変化を見据えて種を撒く必要がある、地道な努力の連続なのだから。】と紹介している。改めて、勇気をもらった。#引用先:Books&Apps(ビジネスパーソンを励ますwebメデイア)https://blog.tinect.jp/?p=78545111990年 山梨医科大学医学部卒業 国家公務員共済組合虎の門病院内科レジデント1992年 山梨医科大学大学院(不整脈発生機構および主に臨床)1994年 韮崎相互病院内科(一般内科の臨床)1996年 帝京大学医学部内科CCU助手(循環器内科)1999年 米国Scripps研究所博士研究員・上級スタッフ研究員2003年 東京大学医科学研究所助手・助教2009年 東京大学医科学研究所ステムセルバンク特任准教授(独立)2011年 京都大学iPS細胞研究所臨床応用研究部門教授(現職)2016年 千葉大学医学研究院イノベーション再生医学分野教授(現職)2017年 千葉大学再生治療学研究センター長2019年 千葉大学特定認定再生医療等委員会委員長(現職)2022年 京都大学iPS細胞研究所臨床応用研究部門長京都大学 iPS細胞研究所 臨床応用研究部門 教授 浩iPS細胞由来血小板:臨床試験開始までの道のりと今後の課題

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