第43回 再生医療の最前線
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タカハシジュン iPS細胞とはinduced pluripotent stem cell(人工多能性幹細胞)のことで、身体を構成するあらゆる臓器の細胞に分化することができる。しかも、無限に増やすことができるので、細胞移植に必要な細胞を大量に作ることができる。 近年iPS細胞を用いた神経再生医療が現実味を帯びており、パーキンソン病はその対象疾患のひとつである。パーキンソン病は脳内のドパミン神経細胞が徐々に減少する神経難病で、手足が震えたりこわばったりし次第に動けなくなる。そこで、iPS細胞からドパミン神経細胞を作り、失われた神経細胞を細胞移植で補うことで症状改善を期待する。 我々はヒトiPS細胞からドパミン神経細胞を誘導することに成功し、マウス、ラット、さらにはカニクイザルのパーキンソン病モデルを用いて、脳内にドパミン神経細胞が生着し機能すること、神経症状が改善すること、腫瘍形成などの副作用がみられないことなどを明らかにした。 これらの成果に基づき、2018年にパーキンソン病患者に対する治験を開始した。7名の患者でそれぞれ2年間の経過観察を予定しているが、すでに手術はすべて完了している。本講演では、基礎研究から治験にいたる過程、さらには将来展望について紹介する。主な研究領域神経再生、脳神経外科学1986年 京都大学医学部卒業1986年 京都大学医学部脳神経外科研修医1989年 京都大学大学院医学研究科博士課程入1993年 京都大学大学院医学研究科博士課程修了(医学博士)1993年 京都大学医学部脳神経外科助手1995年 米国ソーク研究所(Dr. Fred Gage)ポスドク研究員1997年 京都大学医学研究科脳神経外科助手2003年 京都大学医学研究科脳神経外科講師2007年 京都大学再生医科学研究所生体修復応用分野准教授2012年 京都大学iPS細胞研究所臨床応用研究分野教授2022年 京都大学iPS細胞研究所所長京都大学 iPS細胞研究所所長 淳髙橋学9iPS細胞を用いた パーキンソン病治療

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