ヨコ 現在iPS細胞から特定の細胞、組織、シートを樹立し成体に戻す再生医療は臨床応用がすでに開始されている。一方で3次元構造をもつ臓器再生による機能不全の抜本的治療は、期待こそされているものの現実味が乏しいと諦められてきたのが現実である。特に腎臓は解剖学的生理学的に非常に複雑な構造と機能を持つため、それを再現するのは不可能とされてきた。しかし我々は皆生まれる10ヶ月前には一つの細胞(受精卵)であり、子宮の中で発育する際に腎臓を二つずつ作り上げている。つまり発生時には腎臓再生プログラムが備わっていたということになる。このプログラムを発生中の異種の胎仔から借用してiPS細胞から腎臓を作るという腎臓再生法が、我々の開発した「胎生臓器補完法」となる。実際には腎臓発生初期の後腎組織を採取しiPS細胞由来ネフロン前駆細胞(NPC)を注入し移植する。ネフロン前駆細胞は腎臓発生ニッチ内で発生を継続しホスト血管をからなる成熟ネフロンまで分化し尿生成を開始する。我々は、新たに開発した薬物誘導型NPC置換システムを搭載することにより、純粋ヒト腎臓の再生が可能となることに成功し、現在大動物を用いて安全性有効性検証実験を進めている。 本シンポジウムでは臨床応用に向けた現時点での期待と課題を整理し、すでに臨床応用まで到達している先人方のご意見をいただきたいと考えている。主な研究領域腎病理学、腎臓再生医学主な著書「移植可能な臓器再生 再生医療叢書」(朝倉書店)「Use of the nephrogenic niche in xeno-embryos for kidney regeneration in “Kidney Development, disease, repair and regeneration” edited by Melissa H Little」(Academic Press)「Renal stem cells and kidney regeneration in “Stem cell biology and regenerative medicine networks in stem cells”.」(SpringerLink)1991年 東京慈恵会医科大学卒業1993年 東京慈恵会医科大学大学院医学系研究科博士課程入学1993年 英国University College London医科大学留学1997年 東京慈恵会医科大学内科学講座第二助手(現腎臓・高血圧内科)1998年 東京慈恵会医科大学附属青戸病院(現葛飾医療センター)2005年 東急病院内科、透析センター(現腎臓・透析内科)2007年 東京慈恵会医科大学DNA医学研究所プロジェクト研究部腎臓再生研究室室長(兼務)2013年 東京慈恵会医科大学腎臓・高血圧内科主任教授2018年 日本腎臓学会理事2021年 NPO法人日本腎臓病協会理事2022年 東京慈恵会医科大学副学長東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科 教授タカシ 隆横尾オ83次元臓器再生による 次世代腎不全治療法開発
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