川ナ名佐5カワケイ ヒトのがんで微生物が病因に関わるがんには、肝臓がんの肝炎ウイルス、胃がんがピロリ菌、上咽頭がんのEBウイルス、そしてヒトパピローマウイルス(HPV)のHPV関連がんがあげられる。HPV関連がんの中で、子宮頸がんは最も患者数が多く、かつ若年発症のがんである。HPVの寄与率は、子宮頸がん(95%)を筆頭に、肛門がん(90%)、中咽頭がん(60%)、腟がん(50%)、外陰がん(50%)、陰茎がん(30%)となっている。これら以外にも口腔がん、肺がん、膀胱がんなどもHPVとの関連性は指摘されている。HPVは、性行為によって感染し、多くの男女が感染しているありふれたウイルスである。HPV感染からがんまで進展するのはごく一部であるが、HPV関連がんの必要条件になっていることから、HPV感染を予防するHPVワクチンはがん予防の観点から期待が大きい。また、我々はHPVを標的にした前がん病変の創薬を行っている。ウイルス感染予防やウイルス治療薬ががん予防になるところがウイルスとがんの最大の特徴であり、本講演ではその点を紹介したい。主な研究領域婦人科腫瘍学、産婦人科感染症、ワクチン学主な著書1)「悪性腫瘍(産科婦人科腫瘍 5)1章 子宮頸癌 分子生物学の進歩」(中山出版)2)「再発卵巣癌・卵管癌・腹膜癌、卵巣がん・卵管癌・腹膜癌治療ガイドライン2020年版」(金原出版)3)「婦人科腫瘍治療アップデート、トランスレーションリサーチーHPVを標的としたCIN治療薬の創薬開発の現状、167-177」(中外医学社)4)「まるわかりワクチンQ&A 3版、10.子宮頸癌」(日本医事新報社)1993年 東北大学医学部医学科卒業 東京大学医学部産科婦人科学研修医、同医員1996年 厚生労働省ヒューマンサイエンス振興財団リサーチフェロー(国立感染症研究所にて、HPV研究を開始)1998年 東京大学医学部産科婦人科学助手1999年 埼玉県立がんセンター婦人科医員2000年 東京大学医学部産科婦人科学助手2001年 学位(医学博士)取得(東京大学)2003年 米国ハーバード大学(Brigham & Women's Hospital)産婦人科リサーチフェロー2005年 東京大学医学部産科婦人科学助教2011年 東京大学医学部産科婦人科学講師2013年 東京大学大学院医学系研究科生殖発達加齢医学専攻産婦人科学講座准教授2016年 日本大学医学部産婦人科学系産婦人科学分野主任教授2020年 日本大学医学部附属板橋病院副病院長2021年 日本大学医学部附属板橋病院病院長補日本大学 医学部産婦人科学系 産婦人科学分野 主任教授 敬ヒトパピローマウイルス(HPV)と発がん
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