ヨツヤナギ ウイルスは動物・植物の細胞に侵入し、細胞内で増殖する微生物である。他の生物に寄生しないと増殖できない点が細菌とは異なっている。 新型コロナウイルスについて考えてみよう。このウイルスは鼻・喉・気管支など呼吸器粘膜細胞の表面にある受容体に結合し細胞内で増殖する。増殖したウイルスは隣接する細胞に感染し、細胞を破壊していく。その結果嗅覚異常、咳・痰などが生じる。肺に広がると肺炎を起こす。 ウイルスに細胞が感染すると白血球がその場に動員され、炎症反応が起きる。発熱・全身のだるさなどが引き起こされる。 呼吸器の粘膜細胞から侵入するウイルスにはインフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルスなど様々なウイルスがある。麻疹ウイルス、風疹ウイルスはそれぞれ特有の発疹がみられる病気である。このように病気の症状・所見は必ずしもウイルスの侵入部に限らない。 新型コロナウイルスのように呼吸器から侵入するウイルスから身を守るのは容易なことではない。現在はすべての人がマスクをすることでこうした呼吸器感染症がかなり防げているがマスク着用をずっと続けるわけにはいかない。ワクチン接種による防御が望まれることになる。 呼吸器のほかにも消化器・神経・生殖器などから侵入するウイルスがいろいろとある。本講演ではその代表的なものを紹介しながら“ヒトに病気を起こすウイルス・ワールド”を見て頂こうと思う。主な研究領域感染症内科学(主としてウイルス性疾患)、感染制御学、肝臓病学、消化器病学主な著書監修「ウイルス肝炎感染防止ガイドライン」(協和企画)共著「C型肝炎最前線[新世代のDAAsをどう使うか・IFNの使い方はどう変わるか]」(日本医事新報社)「予防接種の現場で困らない まるわかりワクチンQ&A」(日本医事新報社)1986年 東京大学 医学部医学科卒業1988年 東京大学医学部第一内科入局1993年 東京大学医学部第一内科助手1998年 聖マリアンナ医科大学内科学講師2004年 東京大学医学部附属病院感染制御部講2008年 東京大学医学部感染症内科准教授2016年 東京大学医科学研究所先端医療センター感染症分野教授2018年 東京大学医科学研究所附属病院副病院2021年 東京大学医科学研究所附属病院病院長 現在に至る東京大学医科学研究所 先端医療研究センター感染症分野 教授ヒロシ 宏四柳師長3ヒトに病気を起こす ウイルス
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