トウアキヒコ 新興感染症(Emerging Infectious Diseases)の脅威は、最近の新型コロナウイルス感染症(Coronavirus Disease 2019, COVID-19)の世界的大流行に代表されるように、社会的なインパクトは極めて大きい。新興感染症は、多くのヒトが免疫を持たず、誰もが感染するリスクを持ち、地域や国をこえ世界中に広がる可能性がある。一方で、再興感染症(Re-emerging Infectious Diseases)は、既に認知されていたものの近年再び流行し、問題となっている感染症で、近年は新興・再興感染症の中でも、特にウイルス感染症の報告が多い。 同じ感染症でも小児と成人ではその病態が異なることがある。COVID-19においても、この2年間で、小児患者は人口比に比べ少ないこと、重症化のリスクは低いことが分かってきたが、感染後、小児に独特の合併症である多系統炎症性症候群(Multisystem Inflammatory Syndrome in Children, MIC-C)の報告や、新しい変異ウイルス(デルタ株など)による患者数の増加により、重症例の報告も増加している。小児領域において、新興感染症であるパレコウイルスA3感染症は、新生児、早期乳児に限り敗血症や髄膜脳炎などの重症感染症をきたし、再興感染症であるエンテロウイルスD68感染症は、特に小児で喘息様の呼吸器症状や予後不良の急性弛緩性麻痺をきたすことが報告されている。小児への新興・再興感染症の脅威は、今後も継続することが考えられる。 本講演では、近年小児領域で問題となっている新興・再興ウイルス感染症の中でも、COVID-19、パレコウイルスA3感染症、エンテロウイルスD68感染症の病態生理や診療について最新の知見を含めて議論したい。主な研究領域小児のウイルス感染症(特にパレコウイルスA3感染症、伝播、予防)、小児の予防接種など主な著書「ネルソン小児感染症治療ガイド 第2版」(医学書院)「予防接種の手びき〈2020-21年度版〉」(近代出版)「子どもの予防接種」(診断と治療社)「小児感染免疫学」(朝倉書店)「ワクチン:基礎から臨床まで」(朝倉書店)1991年 新潟大学医学部卒業 1995年 Harbor UCLA メディカルセンターアレルギー臨床免疫部門リサーチフェロー1997年 南カルフォルニア大学(USC)小児科聖路加国際病院小児科レジデントレジデント2000年 カルフォルニア大学サンディエゴ校 (UCSD)小児感染症科クリニカルフェロー2004年 UCSD Assistant Professor2008年 国立成育医療研究センター内科系専門診療部感染症科医長(その後、感染防御対策室室長、ワクチンセンター長を併任)2009年 東邦大学医学部客員教授2011年 新潟大学大学院医歯学総合研究科小児科学分野教授(現職)2019年 UCSD Associate Professor2020年 新潟大学医学部副医学部長新潟大学大学院医歯学総合研究科 小児科学分野 教授サイ齋 昭藤彦8小児領域における新興・再興ウイルス感染症
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