第41回メディコピア教育講演シンポジウムがんゲノム医療の最前線西ト人オ5 固形がん診療において、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が標準的治療の一角を占めるようになった。これらの抗がん薬適応を判断するためにコンパニオン診断薬が用いられる。肺癌においては、EGFR, BRAF変異検査、ROS1, ALK融合遺伝子、最近ではMETエクソン14スキッピング検査等の腫瘍組織検体を用いた複数の検査が必要である。 血漿検体を用いた検査も一部承認されている。EGFR-TKI(チロシンキナーゼ阻害薬)治療に耐性となった後、二次的耐性変異であるEGFR T790M変異の検出により、第3世代のEGFR-TKIオシメルチニブが適応となるが、薬物治療後の再生検は、侵襲的であり臨床上困難な場合も多く、低侵襲な血漿検体を用いたLBxが用いられる。分子標的薬やICI治療中の循環腫瘍DNA(ctDNA)変異の有無により、効果予測や「偽増大」の判断が可能と考えられている。超高感度アッセイ法を用い、血漿中に存在する微量のctDNAの網羅的な遺伝子プロファイリングが可能となった。腫瘍切除術後、一定時間を経過した時点で、ctDNA中の変異の存在を把握する微小残存病変を検査することで、再発を予測可能であり、術後治療の適否の判断となり得る知見も集積してきた。より精密で、低侵襲ながん個別化医療の実装の為に、LBxについて将来展望を含めて概観する。主な著書「がん専門相談員のためのがんゲノム医療相談支援マニュアル 2020年度3月版」(日本臨床腫瘍学会編)「実験医学増刊 Vol.38 No.15 ゲノム医療時代のがん分子標的薬と診断薬研究〜「治療」の選択肢を広げる新しい標的、併用療法、横断的・マルチコンパニオン診断薬、リキッドバイオプシー」(羊土社)「がんの分子標的と治療薬事典」(羊土社)「チーム医療のための分子標的治療薬」(医薬ジャーナル社)1986年 和歌山県立医科大学医学部卒業1988年 和歌山県立医科大学第4内科助手1990年 ㈶がん研究振興団リサーチレジデント(於国立がんセンター)1992年 国立がんセンター研究所薬効試験部研究員1996年 同耐性研究室室長2006年 近畿大学医学部ゲノム生物学教室主任教授2014年 近畿大学ライフサイエンス研究所ゲノムセンター長(兼担)現在に至るニシカズ近畿大学医学部 ゲノム生物学教室 教授 和尾がん個別化医療におけるリキッドバイオプシー(LBx)の役割
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