第41回 がんゲノム医療の最前線
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第41回メディコピア教育講演シンポジウムがんゲノム医療の最前線ム武藤3 「がん」は、遺伝子(ゲノム)の異常でおきる病気と言われている。明らかにがんの原因となるゲノム異常は数%の場合が多いが、それを標的とした薬剤(コンパニオン診断と分子標的薬剤)の開発が進み、治療成績は向上している。最近は、ゲノム解析技術の進歩、特に次世代シークエンサー(Next generation sequencer, NGS)の登場により、高速かつ網羅的にゲノム解析をすることが可能になってきた。そのため、それぞれのがんで起きているゲノム異常に合わせて、効果が期待出来て、副作用が少ないと予想される治療薬を選択するという「がんゲノム医療」の時代になろうとしている。 2018年4月にがんゲノム医療を推進するために、我が国では全国11カ所のがんゲノム医療中核拠点病院が指定され、そこと連携するがんゲノム医療連携病院(156施設)が2019年4月までに選定された。2019年9月には、連携病院からがんゲノム医療中核拠点病院と同等の機能を有するがんゲノム拠点病院34カ所が選出された。2020年4月現在、我が国には、12のがんゲノム医療中核拠点病院、33の拠点病院、161の連携病院が指定され、がんゲノム医療を推進している。 さらに2019年6月より、NGSを用いた2つのがん遺伝子パネル検査(OncoGuideNCCオンコパネル、FoundationOneCDx)が、我が国の公的保険医療制度の中で実施できるようになった。その対象は、標準治療のない、または標準治療が終了した(終了が見込まれる者も含む)固形がん患者である。FoundationOneCDxは、コンパニオン診断の機能も搭載されているが、コンパニオン診断として使用した場合は、保険点数上、医療機関にとって採算がとれない診療報酬点数になっており、事実上、コンパニオン診断としての使用はできず、がん遺伝子パネル検査の価値を最大限に活用できていない可能性がある。遺伝子プロファイリングを目的としたがん遺伝子パネル検査後には、日本人のゲノムデータベースを構築するため、C-CAT(Center for Cancer Genomics and Advanced Therapeutics:がんゲノム情報管理センター)に詳細な臨床情報や遺伝子解析情報を登録するとともに、C-CATが作成する調査結果を用いたエキスパートパネルを開催した上で、患者に説明しなければ保険点数が算定できない仕組みになっている。また、エキスパートパネルには、がん薬物療法の専門医、臨床遺伝専門医、認定遺伝カウンセラー、病理医、NGSに精通した者などの専門家が参加しなければならない。また、がんゲノム中核拠点病院は、がんゲノム医療連携病院の症例を含めたエキスパートパネルを開催する必要があり、連携病院はそれに参加しなければ保険点数が算定できない。がん遺伝子パネル検査を実施しても、治療に結びつくのは10-15%程度と報告されている。また、がん遺伝子パネル検査で見つかる候補薬は保険適用外である場合が多く、実診療のなかで保険適用外で治療を実施するのは極めて困難な状況である。現在の最大の課題は、がん遺伝子パネル検査のタイミングと検査後の薬剤アクセスの改善である。主な研究領域腫瘍内科、消化器内科、ゲノム医療、予防医学主な著書「保険診療下でのがんゲノム医療(癌と化学療法 2020年」)(癌と化学療法社)「わが国のがんゲノム医療の現状と課題(癌と化学療法 2020年)」(癌と化学療法社)「日本におけるprecision medicineの現状と展望(腫瘍内科 2020年)」(科学評論社)1991年 福島県立医科大学 卒業 1995年 国立がんセンター東病院レジデント/スいわき市立総合磐城共立病院(福島県)タッフ/医長2001年 国立がんセンター研究所支所 がん治療開発部室長(併任)2007年 京都大学大学院医学研究科消化器内科学講座准教授2012年 京都大学大学院医学研究科腫瘍薬物治療学 〜現在 講座教授 2018年 京都大学医学部附属病院がんゲノム医療部 〜現在 部長(併任) 京都大学医学部附属病院腫瘍内科科長同院クリニカルバイオリソースセンター長(併任)2019年 病院長補佐(併任) 〜現在2020年 同院次世代医療・iPS細胞治療研究センター 〜現在 長(併任)トウマナブ京都大学大学院医学研究科 腫瘍薬物治療学 教授 学我が国におけるがんゲノム医療の歩みと将来展望

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