第41回 がんゲノム医療の最前線
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第41回メディコピア教育講演シンポジウムがんゲノム医療の最前線秋■田俊 9主な研究領域臨床腫瘍学、肺がんをはじめとする固形がんの薬物療法、がんゲノム医学・分子生物学の臨床応用主な著書「内科学・第11版」原発性肺腫瘍 834頁-843頁 矢崎義雄総編集(朝倉書店)「新臨床腫瘍学 改訂第5版(がん薬物療法専門医のために)」日本臨床腫瘍学会編集委員会、秋田弘俊ほか編(南江堂)「入門腫瘍内科学 改訂第3版」日本臨床腫瘍学会編集委員会、秋田弘俊ほか編(南江堂) 肺がんの薬物療法は細胞障害性抗がん薬と制吐療法の進歩、分子標的治療薬の開発、免疫チェックポイント阻害薬の臨床導入と、この10数年間で飛躍的な進歩を遂げている。とくに非小細胞肺がんにおいては、その大きな要素は、多くのドライバー遺伝子変異の発見とそれに対する分子標的治療薬の開発によっている。EGFR、ALKに次いで、最近では、ドライバー遺伝子ROS1、BRAF、NTRK、METに対する治療薬が保険診療に導入され、今後に向けてRET、HER2、RASといったドライバー遺伝子に対する薬剤の臨床開発が進んでいる。一方、これらのドライバー遺伝子変異を示す非小細胞肺がんの頻度は、EGFR遺伝子変異を除けば、それぞれ数%以下であり、個々の肺がん患者においてがん遺伝子診断することが治療薬を選択する上で極めて重要になっている。ドライバー遺伝子に対する分子標的治療薬の使用に当たってはコンパニオン診断薬による検査で陽性であることが必須となっている。 がん遺伝子診断検査方法として、個々の遺伝子異常を個々の検査で解析する場合、検査検体、時間、費用等の浪費が懸念され、複数の遺伝異常をひとつの検査で解析できる遺伝子パネル検査(がんゲノム医療)に期待が集まっている。2019年6月に「オンコマイン™ Dx Target TestマルチCDxシステム」(オンコマインDxTT)が切除不能な進行・再発非小細胞肺がんの初回治療薬を選択する検査として保険収載された。上記ドライバー遺伝子のうち、EGFR、ALK、ROS1、BRAFに対する分子標的治療薬のコンパニオン診断薬となっている。また、「Archer® METコンパニオン診断システム」がMETに対する分子標的治療薬のコンパニオン診断薬に、「FoudationOne® CDxがんゲノムプロファイル」が肺がんではEGFR、ALK、ROS1、MET、NTRKに対する分子標的治療薬のコンパニオン診断薬になっている。しかし、遺伝子パネル検査が臨床導入されて間もないこともあって、「解析不能例が多い」、「検査結果報告までに時間が掛かる」など、臨床現場から戸惑いが出ている。遺伝子パネル検査の普及のためには、遺伝子パネル検査用検体を採取する診断医、検体の評価・準備をする病理医、検査結果に基づいて治療薬を選択する治療医の3者の間の緊密な連携が肝要である。■■■■■■1981年 北海道大学医学部卒業1987年 北海道大学大学院医学研究科修了(医学博士)米国国立癌研究所NCI-Navy Medical Oncology部門留学(Fogarty Visiting Fellow)1990年 北海道大学医学部附属病院助手(第一内科)1997年 北海道大学医学部附属病院講師(第一内科)2001年 北海道大学大学院医学研究科教授(腫瘍内科学分野)2004年 北海道大学病院外来治療センター部長2016年 北海道大学病院副病院長、同病院がん遺伝子診断部長2017年 北海道大学医学部図書館長2018年 北海道大学病院腫瘍センター長2019年 北海道大学副学長、北海道大学病院病院長北海道大学大学院医学研究院 腫瘍内科学教室 教授 弘肺がん薬物療法と がんゲノム医療

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