第41回メディコピア教育講演シンポジウムがんゲノム医療の最前線原■史8 個々の遺伝子プロファイルに合った個別化治療を行うプレシジョンメディシン(精密医療)は、特にがん領域において目覚ましい発展を遂げており、我が国においても2019年6月からFoundationOne CDxがんゲノムプロファイル(F-One)、OncoGuide NCCオンコパネルシステム(NCCOP)の2種類のがんゲノム検査が保険診療にて実施できるようになった。原発不明癌は標準治療が存在しないことから、初回治療の段階からがんゲノム検査が適応となる。がんゲノム検査では、EGFR遺伝子変異やALK、NTRKなどの融合遺伝子などコンパニオン診断相当の遺伝子異常を検出することが可能である。また、免疫チェックポイント阻害剤の有効性の指標とされるTMB(Tumor Mutation Burden)も測定することが出来る。原発不明癌においては、こうしたコンパニオン診断相当の遺伝子異常を網羅的にスクリーニングすることが出来るため、高い有用性が期待できる。しかし、検査受診者全体を見ると、がんゲノム検査で推奨された治療への到達率は高く見積もっても10−15%と報告されており、検査の普及と同時に、適応外使用に関する治療体制の整備が必要不可欠である。 本講演では、原発不明癌に対するがんゲノム検査の有用性を紹介しつつ、日本の医療制度における個別化治療の普及における問題点、課題について紹介する。主な研究領域分子病理学、診断病理学、がんゲノム医療、細胞内シグナル伝達主な著書「がんと正しく戦うための遺伝子検査と精密医療〜いま、医療者と患者が知っておきたいこと」(羊土社)特集「悪性腫瘍の病理・遺伝子診断に基づくプレシジョンメディシン」医学のあゆみ(医歯薬出版)1995年 北海道大学医学部卒1999年 北海道大学大学院医学研究科博士課程(病理)修了1999年 北海道大学大学院医学研究科助手(第二病理)2002年 米国カリフォルニア大学サンディエゴ校留学2008年 北海道大学大学院医学研究科探索病理学講座(特任准教授)2015年 同(特任教授)2016年 北海道大学病院がん遺伝子診断部(統括マネージャー(兼任))2017年 慶應義塾大学医学部特任教授、腫瘍センターゲノム医療ユニット長2019年 慶應義塾大学医学部臨床研究推進センター教授■■■■慶應義塾大学医学部 腫瘍センター ゲノム医療ユニット長 教授■■西 広がんゲノム検査に基づく 原発不明癌の治療戦略
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