これまでの臨床検査のイノベーションは新しい反応やバイオマーカーを見つけ、そしてそれを高感度で高速な自動測定系まで発展させることであった。後半の測定系は現在あまりに自動化高感度化して、検体検査のみならず他の検査分野においてもますますブラックボックスと化している。検査の現場にいる検査専門医や検査技師は単にユーザーに甘んじるのかの岐路にいる。測定の高度化はもちろんまだ進歩するだろうが、特に実務レベルで考えると行きつくところに行きついている感もある。バイオマーカー探索も残っているが、それはイノベーションと言うにはカビ臭い。 まず個々の患者検査を考えると、放射線、内視鏡、病理組織の画像診断における自動AI診断の進歩は目を見張るものがあるが、何故か臨床検査における利用は遅々としているように思われる。その理由は臨床検査データがあまりに多岐にわたる生体反応を反映しており、さらにそれら生体反応そのものがまだ十分には解明されていいないからであろう。もう一つは、今後蓄積していく数千万人にも及ぶ医療ビッグデータである。その利用の隘路は検査結果の多義性が人間の数だけさらに増すことと検査の標準化であろう。 逆に言うと、そこに我々がAIと共に貢献できるイノベーションがまだ無限に広がっているように見える。主な研究領域ミトコンドリアと疾患、代謝解析によるバイオマーカー探索、検査の標準化と医療ビッグデータ利用1982年 九州大学医学部医学科卒業 九州大学医学部附属病院研修医(小児科)1988年 九州大学大学院医学研究科生化学専攻修了九州大学医学部附属病院医員(中央検査部)1989年 福岡大学医学部助手(臨床検査医学講座)1992年 ドイツ国マックスプランク研究所客員研究員1993年 九州大学医学部助手(生化学第2講座)1996年 九州大学医学部助教授(臨床検査医学講座)2006年〜現在 九州大学大学院医学研究院教授(臨床検査医学分野)カンドンチョン九州大学大学院医学研究院 臨床検査医学分野 教授 九州大学病院 検査部 部長 東康天 6臨床検査における イノベーションとAI
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