第40回 医療におけるAIの役割と未来
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大エ江彦 人工知能の活用が各分野で進んでおり医療においても例外ではなく、さまざまな診断機器や治療支援に人工知能技術が組み込まれつつある。人がこれまで経験や多くの事例学習を積み重ねてきたことで、もはや考えずともできるほどにまで身についた専門的技能を、今の人工知能技術も大量のデータによる学習を高速に行うことで身につけるようになった。人が考えずとも出せるようになった答えに対して、なぜその答えなのかを問うて説明させることは難しい。同じように、今の人工知能に出した答えの理由を説明させることは難しい。学習した大量のデータに極端な偏りがあれば、偏った判断をするように学習してしまうのも人と同じともいえる。過去問題ばかりで勉強した試験対策では想定外の問題に回答できないのも同じであろう。 現時点での人工知能は、物事を体系的知識により論理的に推論し、熟慮熟考を重ねて結論を出すような知能を身につけたわけではないことを、私達は知っておきたい。同時に、医療において、知識をもとにした論理的な思考を必要としない診断や判断はあったのかと考えてみることも必要である。そして、知識を論理的に使いこなせる人間が、医療がその場面に応じてこうしたウブな人工知能技術をうまく使いこなしてこそ、能力を補完しあった新しい医療が広がるであろう。主な研究領域医療における情報学の活用、医療情報システムの構築、医療人工知能111984年 東京大学医学部卒業、外科系研修医を経て86年より大学院博士課程で医療人工知能システムの研究に従事1989年 東大病院中央医療情報部助手、同講師、助教授を経て、1997年より現職の東京大学大学院医学系研究科医療情報学分野教授。これまでに東大総長補佐、東大病院副院長、東大医学部医学図書館長などを歴任2015年 内閣官房健康・医療戦略室 次世代医療ICT基盤協議会構成員2016年〜2019年 日本医療情報学会長オオカズヒコ東京大学大学院医学系研究科医療情報学分野 教授 和医療におけるAIの 活用とこれからの課題

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