第40回 医療におけるAIの役割と未来
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 かつてSFの世界であった人工知能(AI)は、今やスマートホンやスマートスピーカーを通して日常生活に浸透している。いっぽう医療分野へのAIの導入は早く、心電図の自動診断は1970年代には実用化されている。深層学習にもとづく画像診断AIの最近の進歩は驚異的であるが、ゲノムの解読結果を病気の診断や治療に反映させる“ゲノム医療”に特化したAIも既に実用段階にある。私たちは2015年からIBMと共同研究を行っており、同社が開発したAIのWatsonをゲノム医療用にカスタマイズした“Watson for Genomics(WfG)”を実際に運用して、血液がん診療の支援ツールとしての有用性と課題の検討を続けている。この4年間でその使い勝手は格段に進歩し、支援ツールとしてほぼ実用的なレベルに到達している。ただし現時点では、解析結果を臨床現場向けにわかりやすく翻訳する作業を担う「訓練を積んだ専門医」が不可欠であり、この領域の人材育成が重要である。AIと専門医(人知)の融合がお互いをレベルアップさせることでより精度の高いゲノム医療=プレシジョンメディスンを実現できることを実感している。主な研究領域血液内科学主な著書中村聡介、横山和明、東條有伸:造血器腫瘍に対するクリニカルシークエンス「特集 臨床応用に向けた疾患シーケンス解析」遺伝子医学MOOK 34号 143-147頁(メディカルドゥ社)小林真之、東條有伸:人工知能(AI)の支援によるがん診断の将来「がん生物学イラストレイテッド 第2版」423〜428頁(羊土社)1981年 東京医科歯科大学医学部医学科卒業1987年 日本学術振興会がん特別研究員(〜昭和63年9月)1988年 東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(医学博士)1988年 東京大学医科学研究所附属病院内科診療科助手1991年 東京大学医科学研究所病態薬理学研究部助手1995年 東京大学医科学研究所附属病院内科診療科講師2002年 東京大学医科学研究所先端医療研究センター分子療法分野助教授2005年 東京大学医科学研究所先端医療研究センター分子療法分野教授2012年 東京大学医科学研究所先端医療研究センター長(〜2018年3月)2018年 東京大学医科学研究所附属病院病院長トウジョウアリノブ東京大学医科学研究所 先端医療研究センター 分子療法分野 教授 有東條伸9ゲノム医療におけるAIの活用

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