第39回 変わりつつあるアレルギー疾患の考え方
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 アレルギー疾患は様々な臓器に多彩な症状を呈するが、症状の生じるメカニズムには共通点があり、抗原(アレルゲン)とそれを認識するIgE抗体との結合に続く細胞刺激・組織傷害が発端となる。蜂毒アレルギーの経過(蜂に何度か刺されるうちにアレルギー体質を獲得し(感作と呼ばれる)、次に蜂に刺されるとアナフィラキシーが起きる)は典型的である。そして、乳児期から学童期、思春期、成人に至る間に、アレルギー疾患が形を変えながら生じる、というアレルギーマーチの概念も広く知られている。そして最近は、アレルギー疾患の病態解析と治療の進歩が著しい。我々の周囲に存在する無数のアレルゲンの解明、環境物質の影響、感作と症状誘発の原因が同一品目とは限らない状況(例:加水分解小麦含有石けんによる感作と小麦食品依存性運動誘発アナフィラキシー)、原因に敢えて近づくことが功を奏する場面(アレルゲン免疫療法)、アレルギー性炎症を病態の中心とする位置づけ(気管支喘息)などがアレルギー疾患の考え方を大きく変えつつある。主な研究領域喘息およびアレルギー性炎症の病態解明、薬物アレルギーの解析主な著書「内科医が知っておきたいアレルギー性鼻炎診療」(文光堂)「実臨床に役立つ薬物アレルギーの対処法と考え方」(医薬ジャーナル社)「アナフィラキシーの病態、アレルギーの分類、薬物アレルギー・抗菌薬:アレルギー疾患のすべて」(日本医師会雑誌)「アレルゲン免疫療法・皮下注射法:今日の治療指針2016年版」(医学書院)「薬物アレルギー:アレルギーのはなし−予防・治療・自己管理−」(朝倉書店)1987年 東京大学医学部医学科卒業 東京大学医学部附属病院内科研修医1988年 日立製作所日立総合病院内科研修医1989年 東京大学医学部附属病院物療内科医員1994年 Beth Israel Hospital(米国 Boston)病理学研究員1998年 山梨県立中央病院アレルギー内科医長東京大学医学部附属病院アレルギー・ リウマチ内科助手2008年 東京大学医学部附属病院アレルギー・リウマチ内科講師2009年 帝京大学医学部内科学講座呼吸器・ アレルギー学准教授2011年 帝京大学医学部内科学講座呼吸器・ アレルギー学教授ヤマグチマサ帝京大学医学部内科学講座呼吸器・アレルギー学 教授 正山口オ雄3総論:アレルギー疾患診療の最新動向

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