第39回 変わりつつあるアレルギー疾患の考え方
12/16

 アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能の低下(乾燥皮膚・ドライスキン)やアレルギーを起こしやすい体質を背景に、種々の悪化因子が加わって湿疹が生じ、軽快と悪化を繰り返す。皮膚のバリア機能が低下すると、汗や石けんのすすぎ残しなど日常生活でのわずかな刺激で痒い湿疹ができる。痒い湿疹を引っ掻くことで湿疹がさらに悪化する、という悪循環によって湿疹が慢性に続くことが、アトピー性皮膚炎が長く続く大きな理由である。 治療は、まず「症状がないか、あってもわずかで、日常生活に支障がなく薬物療法もあまり必要としない」状態を目標とし、その後「適切な治療によって症状がコントロールされた状態を長く維持する」ことで薬による治療が不要になるというゴールを目指す。治療の3本柱は、①湿疹のために生じた悪循環による悪化を止めるために、ステロイド外用薬などの抗炎症外用薬を中心とした薬による治療、②保湿のスキンケアで低下した皮膚バリア機能の補完、③個々で異なる悪化因子に対する対策の可能な範囲での実践、である。 本講演では、アトピー性皮膚炎の成り立ち、治療に関する最新の情報をお伝えしたい。主な研究領域アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎などのアレルギー性皮膚疾患主な著書編著「エキスパートが答える!アトピー性皮膚炎Q&A55」(診断と治療社)「エキスパートから学ぶ皮膚病診療パワーアップ」(中山書店)101989年 京都府立医科大学医学部医学科卒業 京都府立医科大学附属病院皮膚科研修医1991年 京都市立病院皮膚科医員1992年 京都府立医科大学皮膚科学教室助手1994年 福知山市民病院皮膚科医長1997年 ドイツ・ミュンヘン大学、ボン大学医学部皮膚科研究員2000年 京都府立医科大学皮膚科学教室講師2002年 京都府立医科大学皮膚科学教室助教授2009年 京都府立医科大学大学院医学研究科皮膚科学教授(現在に至る)2017年 京都府立医科大学附属病院副病院長(現在に至る)ノリカト人京都府立医科大学大学院医学研究科 皮膚科学 教授トウ藤加 則アトピー性皮膚炎

元のページ  ../index.html#12

このブックを見る