第39回 変わりつつあるアレルギー疾患の考え方
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 食物アレルギーは小児から成人までに認められるが、乳幼児期が最も多く、各年齢相で原因食物や病態が異なる。全年齢を通して食物アレルギーの多くはIgE依存性の即時型である。新生児期には主に消化器症状を呈する非IgE依存性の「新生児/乳児消化管アレルギー」も存在する。乳児期には湿疹が初発症状でIgE抗体の感作が先行する「食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎」、学童期以降には原因食物摂取後に運動をすることで発症する「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」、樹木や雑草の花粉症と関係がある「口腔アレルギー症候群」などの臨床型も存在する。診断と管理は食物経口負荷試験(以下、負荷試験)の進歩と普及で大きく進歩した。抗原特異的IgE抗体価と負荷試験の陽性確率を示したプロバビリティーが卵白、牛乳、小麦、大豆、ピーナッツ等に対して確立された。食物アレルゲンの解析も進み、特異的なコンポーネントと交差抗原性の元になるコンポーネントの区別が可能となり特異的IgE抗体の診断精度も向上している。ハイリスクの乳児に対して鶏卵とピーナッツの早期導入がピーナッツアレルギーの発症予防に有効であることが示されている。負荷試験の方法の工夫により早期に食物除去の範囲を減らすことも可能である。遷延する重症患者に対して負荷試験で反応閾値を決めそれよりも少ない量から摂取させていく経口免疫療法もこの10年余りで臨床研究として取り組まれている。主な研究領域小児アレルギー、特に食物アレルギー、アナフィラキシーなど主な著書「年代別 症例を通して学ぶ食物アレルギーのすべて」(南山堂)「食物アレルギーの栄養指導」(医歯薬出版)「図解食物アレルギーの悩みを解消する!最新治療と正しい知識」(日東書院)「保護者からの質問に自信を持って答える小児食物アレルギーQ&A」(日本医事新報社)「食物アレルギー診療ガイドライン2016」(日本小児アレルギー学会、協和企画)「アナフィラキシーガイドライン」(日本アレルギー学会)1985年 東京慈恵会医科大学医学部卒業1988年 国立小児医療研究センターアレルギー研究室レジデント1991年 米国ジョンス・ホプキンス大学医学部内科臨床免疫学教室ポストドクトラルフェローシップ1995年 国立相模原病院小児科医員2000年 国立相模原病院医長2001年 国立相模原病院臨床研究センター病態総合研究部長2003年 国立相模原病院臨床研究センターアレルギー性疾患研究部長2012年 東京慈恵会医科大学小児科学教室客員教授2017年 国立病院機構相模原病院臨床研究センター副センター長サワモト国立病院機構相模原病院 臨床研究センター 副臨床研究センター長ヒロ宏 元海澤エビ老8食物アレルギー

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