第38回 認知症
6/13

 認知症の診断は、二つのステップから構成される。最初のステップは認知症か否かの判断で、この過程ではご本人、ご家族から病歴や日常生活の様子を詳しく聴取する。認知症と判断されれば、認知症を起こしている原因疾患を特定する。病型診断とも呼ばれるこのステップでは、アルツハイマー病などの変性性認知症、脳血管性認知症等の原因疾患を鑑別する。この過程では、画像検査と並んで脳脊髄液や血液を用いた診断マーカー検査が補助診断に有用である。アルツハイマー病の方の脳脊髄液ではアミロイドβ42は低下し、総タウ、リン酸化タウが上昇する。これらの診断マーカーを組み合わせると、アルツハイマー病の診断精度が著しく向上する。脳脊髄液中のリン酸化タウは、認知症の鑑別診断を目的に保険診療で検査が可能であり、認知症の専門外来を中心に日常診療に活用されている。脳脊髄液診断マーカーは、認知症の脳内病理を反映して変動することから、認知機能症状が出現する以前の段階(無症候期)から、その変化を検出することが可能である。無症候期の段階に、診断マーカーで将来の認知症発症のリスク評価を行い、疾患修飾薬により認知症の発症を未然に防ぐ先制医療が探索されている。 このような現状をふまえ、本講演では「認知症の診断マーカーの進歩」についての最新情報をお届けする。主な研究領域認知症領域、臨床神経学、臨床ゲノム医学主な著書「認知症疾患診療ガイドライン2017」(医学書院)「Annual Review神経2017」(中外医学社)「NHKきょうの健康:筋肉・骨・歯・認知症」(主婦と生活社)「NHKきょうの健康:認知症の新常識」(NHK出版)「新しい診断と治療のABC アルツハイマー病 第2版」(最新医学社)1991年 新潟大学医学部卒業1993年 新潟大学脳研究所神経内科入局2000年 新潟大学医学研究科大学院博士課程修了(医学博士)シカゴ大学神経生物学センター博士研究員2003年 新潟大学医歯学総合病院神経内科助手2007年 新潟大学脳研究所生命科学リソース研究センター助教2011年 新潟大学超域学術院准教授2013年 新潟大学脳研究所生命科学リソース研究センター教授イケウチタケシ新潟大学 脳研究所 生命科学リソース研究センター 教授 健池内 4認知症の診断マーカーの進歩

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る