第37回 糖尿病診療の未来
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黒ダ田オ生6 2003年 関西労災病院内科医長2004年 City of Hope National Medical Center / Beckman Research Institute Department of Diabetes, Endocrinology, and Metabolismにて Research Fellow主な研究領域1型糖尿病の血糖管理主な著書「さかえ:脳内すい移植」(医歯薬出版)共著「1型糖尿病の治療マニュアル」(南江堂) 血液中のブドウ糖濃度を表す血糖値は指先に針を刺して少量の血液を採取することで測定できる。わが国では2010年から5分毎の皮下組織におけるブドウ糖の連続的な測定(Continuous Glucose Monitoring(CGMと略す))が利用可能となった。数日間の装着後にコンピュータを用いて解析するためその場では確認できない後方視的なものであった。しかし「点」でしか分からなかった血糖値の動向が「線」でわかるようになった。 血糖値を低下させるホルモンであるインスリンはたんぱく質であり、消化吸収されることから現時点では経口薬にはならない。糖尿病患者の5%程度を占める1型糖尿病では膵臓のインスリンを作る細胞が破壊されるため、インスリン注射を外来性に補う必要がある。健常人では何も食べていなくても少量のインスリンを分泌しており一日の中で増減している(基礎インスリン)。また食べた量や血糖値に応じて大変細かいインスリンの調整が行われる(追加インスリン)ため、概ね空腹時血糖値は100mg/dL未満に保たれる。通常の1型糖尿病患者では基礎インスリンに相当する長時間作用型のインスリン1回と追加インスリンに相当する超速効型インスリンを毎食で補う。 インスリンポンプ療法とは携帯型注入ポンプを用いて超速効型インスリンを持続的に皮下投与する治療法である。内臓コンピュータで時間毎の基礎インスリン投与量を増減することが可能であり、追加インスリンは設定しておけば血糖値と糖質摂取量を入力することで自動的に算出して注入できる。その場での血糖値がわかるリアルタイムCGMとインスリンポンプが組み合わさったパーソナルCGM機能付きインスリンポンプ(Sensor Augmented Pump:SAP)が2年前よりわが国でも利用が可能になった。プログラムを設定することで、低血糖や高血糖が予測される時には通知してくれるため適宜患者個人が対処できるという利点がある。ただしそのような状況に応じたインスリンの減量・中断あるいは増量するという機能は備わっていない。 Closed loop insulin pumpとは血糖値をモニターし、それに基づきインスリンを注入することで自動的に血糖管理する人工膵臓を示す。2017年4月から米国ではSAPに加えて低血糖が予測されるとインスリン注入を一定時間停止して正常血糖値になると再開する、また高血糖になると自動で少量の追加インスリンを注入するインスリンポンプが発売見込みである。1982年 1型糖尿病発症1995年 東京医科歯科大学医学部医学科卒業 大阪大学第一内科(病態情報内科学)糖尿病研究室入局1998年 大阪大学大学院病態情報内科学(第一内科)大学院入学近畿膵移植適応検討委員会事務局2007年 大阪大学医学部附属病院内分泌・代謝内科医員2011年 徳島大学糖尿病臨床・研究開発センター助教2016年 徳島大学先端酵素学研究所糖尿病臨床・研究開発センター准教授クロアキ徳島大学 先端酵素学研究所 糖尿病臨床・研究開発センター准教授 暁持続血糖測定器とインスリンポンプ

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