西ユキ希コ子5 日本では、急速にすすむ高齢化と、生活習慣の欧米化、肥満人口の増加などとともに2型糖尿病患者が増加した。かつて、2型糖尿病の薬剤治療はインスリンを代表とするような低血糖のリスクのある薬剤しか選択肢はなかった。また、肥満を背景とする2型糖尿病であるにもかかわらず、薬物治療するうちに血糖値は改善するものの、体重が増加してしまうという問題点もあった。 2009年以降、「インクレチン関連薬」というあらたなインスリン分泌促進作用をもつ薬が発売され、低血糖や体重効果をもたらしにくい治療薬の選択肢ができた。経口薬であるDPP4阻害薬とともに注射薬のGLP-1受容体作動薬もある。これはインスリンではない糖尿病治療注射薬である。 2014年には「SGLT2阻害薬」という薬剤の作用により尿糖排泄を促進させることで血糖も体重も下げる、というさらに新しい作用の治療薬も登場した。 インスリンの開発も日進月歩で、より低血糖リスクが少なく、また患者のライフスタイルにあわせて注射のタイミングなどをフレキシブルにできるようなインスリンも開発された。 注射剤においては、注射頻度、注射デバイスや針の改善も患者の治療満足度に影響するため、さまざまな改良が加えられている。 講演では、このような糖尿病治療薬の進歩についてご紹介する予定である。主な研究領域2型糖尿病、耐糖能異常および糖尿病発症の疫学、糖尿病新薬の治験主な著書「文系MRのための糖尿病自己学習ノート」(SCICUS)「糖尿病NICEBOOK」(SCICUS)「他科専門医にきく糖尿病腎症患者のための22の質問」(SCICUS)「メディカルるるる 糖尿病編(CD-ROM付)」(SCICUS)1994年 東京大学医学部医学科卒業 東京大学医学部第三内科/第四内科(分院)研修1995年 日立製作所日立総合病院内科研修2000年 東京大学医学系大学院博士課程修了 2006年 朝日生命成人病研究所治験部長朝日生命成人病研究所主任研究員ニシ朝日生命成人病研究所 附属医院糖尿病内科 治験部長オオ大 由糖尿病治療薬の進歩
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