糖尿病の診療とは、患者の糖尿病の成因と病態、合併症の有無や重症度を評価し、個々の患者に適した治療目標と治療法を選択し、治療目標の達成状況を定期的に把握し、不十分な場合には、さらに治療法を最適化していく過程である。そのためには、血糖とインスリンやCペプチド、インクレチンやグルカゴン、HbA1c、体重、血圧、血清脂質、合併症(細小血管合併症、大血管症)などの検査が重要である。加えて、個別化した糖尿病診療を行うための検査法の進歩は著しい。成因や病態の検査としては、ゲノム、エピゲノム、メタゲノム、アディポネクチンなどのバイオマーカー、メタボロームやリピドーム、クランプ試験や内臓脂肪蓄積・体組成の測定、MRS、生活習慣や血糖コントロールの評価としては、食事量やその組成、運動量やその内容、連続血糖モニタリングなどがある。合併症の検査についても長足の進歩がある。今後の糖尿病診療は、これらの検査法を上手に組み合わせて患者の病態や状態を詳細に把握して、それを踏まえた個別の予防・治療を施行する個別化医療(Personalized medicine)、先制医療(Pre-emptive medicine)、精密医療(Precision medicine)である。 本講演では、これらの点をはじめとして糖尿病診療における課題と近未来の展望について分かりやすく解説する。主な研究領域内科学、糖尿病学、代謝学主な著書「医学のすすめ」(西村書店)編集「カラー版内科学」(西村書店)総編集「糖尿病学」(西村書店)1978年 東京大学医学部医学科卒業1980年 東京大学医学部第三内科1986年 米国国立衛生研究所(NIH)糖尿病部門客員研究員1996年 東京大学医学部(内科学第三)講師2003年 東京大学大学院医学系研究科代謝栄 養病態学(糖尿病・代謝内科) 教授(現職)2011〜2015年 2016年 日本内科学会理事長、日本糖尿病学会東京大学医学部附属病院長理事長、日本肥満学会常務理事カドワキ門脇3東京大学大学院医学系研究科 代謝栄養病態学(糖尿病・代謝内科)教授タカシ 孝我が国における 糖尿病診療の課題
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