糖尿病は以下の3段論法で治療の必要性が説明できる。 ① 糖尿病は高血糖が慢性的に続く。これによる急性症状があり、かつ長期的に持続すると種々の慢性合併症を来す。 ② 慢性合併症のリスクを小さくするためには、高血糖を管理すればよい。 ③ 高血糖の管理は、種々の治療法を組み合わせて療養することで可能となる。治療法には食事療法、運動療法、薬物療法がある。 即ち、「糖尿病による慢性合併症は適切な自己管理によって予防できるから、その方法を学び、それを継続する必要がある」ということになる。 医療者の論理は以上のようなものである。糖尿病と診断されたひとは、それらの説明やアドバイスで、例えば食事療法をしようと思うだろうか。都合のいい時間に、自分の好きなものを、好きな量だけ食べるという生活がこれらの論理ですぐに変えられるだろうか。 実際に、糖尿病であることや治療を続けることに大きな負担を感じている患者の割合は44.6%に達するという国際的な報告がある。すなわち、糖尿病と診断されたからと言って、直ちに治療に取り組むことができるとは限らない。そこには、納得の時間、感情の処理時間が必要であり、その時間をともに経験する患者-医療者関係が必要であると思われる。主な研究領域糖尿病医療学、糖尿病患者の心理・社会的研究、心理状態測定尺度・QOL質問紙の開発主な著書「病を引き受けられない人々のケア−「聴く力」「続ける力」「待つ力」」(医学書院)、「糖尿病はこころでよくなる(患者向け)」(主婦の友社)、「糖尿病こころのよろづ相談」(メディカルビュー)、「糖尿病医療学入門」(医学書院)、「糖尿病診療よろづ相談」(メディカルビュー)、「糖尿病ビジュアルガイド」(医歯薬出版)、「糖尿病1000年の知恵」(医歯薬出版)、「糖尿病診療のための臨床心理ガイド」(メディカルビュー)、「糖尿病こころのケア」(医歯薬出版)、「糖尿病エンパワーメント」(医歯薬出版)、「糖尿病バーンアウト」(医歯薬出版)、「糖尿病診療事典」(医学書院)、「糖尿病ケアの知恵袋」(医学書院)、「糖尿病の心理臨床」(医歯薬出版)、「栄養士のためのカウンセリング論」(建帛社)、「ホップステップ糖尿病教室」(南江堂)、「糖尿病看護のポイント150」(メディカ出版)101976年京都大学医学部卒業1983年京都大学医学部大学院医学研究科博士課程修了1984年天理よろづ相談所病院内分泌内科勤務1993年ジョスリン糖尿病センター・メンタルヘルスユニット留学1996年天理よろづ相談所病院内分泌内科部長兼糖尿病センター長2010年天理よろづ相談所病院副院長兼内分泌内科部長2012年天理よろづ相談所病院副院長2013年奈良県立医科大学糖尿病学講座教授ヒトシ奈良県立医科大学 糖尿病学講座 教授イシイ井石 均糖尿病 こころのケア
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