教金沢医科大学糖尿病・内分泌内科学講師 糖尿病腎症(腎症)が透析導入原疾患第一位となって久しい。糖尿病症例高齢化や腎機能障害症例増加、非典型的な腎機能急速悪化症例の存在など、多彩な症例を如何に管理していくのか、臨床的に明確な答えは未だにない。現状の糖尿病をベースとした末期腎不全–透析患者の増加を鑑みるに、腎機能の改善–保持を目的とした新規治療戦略の開発が必要であるが、我々は腎症の予後を根本的に改善する魔法の薬や奇跡の治療法を現在利用可能な訳ではない。したがって、腎機能障害を有する糖尿病にどう対するかは重要臨床的課題である。特に糖尿病血糖管理に関しては、腎障害を有する症例においては、使用可能な薬剤は制限され、基本的に長時間作用型スルホニルウレア(SU)薬は避けなければならないが、現実問題として当院含め救急外来には多くのSU薬処方に伴う重症低血糖症例が搬送されている。医原性重症低血糖は予測・予防可能な糖尿病合併症であり、認知症発症や致命的不整脈など様々な合併症とも関係があるため、発症を必ず抑制しなければならない。 その様な臨床的問題とともに、我々は腎症克服を可能にする新たな治療戦略を生み出す研究を引き続き実施することもまた使命である。興味深いことに、新規糖尿病治療薬が腎保護効果も有する可能性も報告されてきた。今後も地道な努力を継続する。主な研究領域糖尿病性腎症、妊娠高血圧腎症の病態解明と新規治療戦略の開発主な著書「糖尿病性腎症:今日の治療指針 2015年版(Volume 57)」(医学書院)共著「糖尿病性腎症チーム医療:Annual Review 糖尿病・代謝・内分泌2013」(中外医学社)「SGLT2阻害薬–腎機能保護の観点からの有用性:糖尿病 Vol. 59(2016)号 No. 9 p. 641-644」(日本糖尿病学会)1996年 滋賀医科大学医学部医学科卒業 1997年 大阪労災病院腎臓内科レジデント1999年 滋賀医科大学大学院博士課程 2005年 Harvard Medical School, Beth Israel 滋賀医科大学研修医(後研究員–医員〜2005年5月)Deaconess Medical Center, ポスドク fellow(Raghu Kalluri Lab)12008年 Harvard Medical School, Beth Israel Deaconess Medical Center, インストラクター(Raghu Kalluri Lab)2010年 金沢医科大学糖尿病・内分泌内科学助2015年 金沢医科大学糖尿病・内分泌内科学准教授カナサキケイゾウ金沢医科大学糖尿病・内分泌内科学 准教授 啓金﨑造 9糖尿病の合併症の管理:腎症
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