第37回 糖尿病診療の未来
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 糖尿病の蔓延は世界的な傾向であり、最新の2015年の糖尿病アトラス第7版によれば、成人の11人に1人が糖尿病で、世界におよそ4億1,500万人の糖尿病患者が存在するとされている。糖尿病は、インスリンの分泌障害や標的臓器における作用不全によって慢性の高血糖がひきおこされる代謝疾患群ではあるが、患者のQOLと生命予後の観点からみれば、心血管病であるともいえる。事実、糖尿病では、動脈硬化症の進展が非糖尿病に比べて約15年早く進み、糖尿病患者の約30〜70%が心筋梗塞や脳血管障害などの心血管系の事故が原因で死亡している。これらの事実は、糖尿病においては、とりわけ‘大血管症’の発症・進展を予防していくことが最も重要な課題の一つであることと示唆している。 本講演では、糖尿病患者の心血管病を未然に抑えていくためには、血糖、血圧、脂質、血栓などの各リスクファクターに対してどう対処していくべきか、これまでに発表された大規模臨床試験のエビデンスに基づいて解説していきたい。主な研究領域終末糖化産物(AGEs)、糖尿病血管合併症、老年疾患主な著書「糖尿病と酸化ストレス」(メディカルレビュー)「CVD予防ハンドブック」(羊土社)「AGEsと老化」(メディカルレビュー)「動脈硬化症の新しい診断・治療標的」(メディカルレビュー)「老けたくなければファーストフードを食べるな」(PHP新書)「老化物質AGEsワールドに迫る」(メディカルレビュー)「糖尿病と血管合併症に関する100の質問」(メディカルレビュー)1989年 金沢大学医学部医学科卒業1993年 金沢大学大学院医学研究科博士課程修了(内科学専攻)1997年 金沢大学医学部講師1999年 米国アルバートアインシュタイン医科大学留学2000年 久留米大学医学部内分泌代謝内科講師2003年 久留米大学医学部心臓血管内科講師2008年 久留米大学医学部糖尿病性血管合併症病態・治療学教授ヤマギシショウ久留米大学医学部 糖尿病性血管合併症病態・治療学講座 教授イチ一 昌岸山8糖尿病の合併症の管理:心血管系

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