第36回 がん診療はこう変わった
6/16

手(この間、1989年 米国国立環境衛生研究所研究員) 体内にがんができると血中に増加する物質がある。一般的にそれを腫瘍マーカーと呼び、診療に役立つ臨床検査として使用されている。代表的な腫瘍マーカーとして、AFP、CEA、 CA19-9、PSAなどをはじめ、保険適用されているもので約40個ある。それらは臓器特異性が高い、すなわち肝細胞がんで上昇している確率が高いAFPから、臓器特異性が低く種々のがんで上昇しているCEAなどまでいろいろであり、診断・治療の指標として適切に使用されている。 がんを疑う症状がある場合、疑わしいがんを効率よく診断できる腫瘍マーカーを測定し、また画像検査や内視鏡検査をすることになる。腫瘍マーカーの利点は、採血などをするだけで測定可能であるため短時間で済み、医療被曝、身体の負担が少ないことであろう。ただし、健診などマス・スクリーニングには不向きで、早期診断に有用なものは少ない。一方、がんの治療中の経過追跡には有効で、治療効果の判定や予後予測などにも力を発揮する。 腫瘍マーカー値を判読するときの注意点は、他の臨床検査値と同様に個人個人で異なるため、カットオフ値(腫瘍マーカーの基準値)内であっても、必ずしも健常とは言えないことである。また、腫瘍マーカーが異常なくてもがんである場合(偽陰性)、腫瘍マーカーが異常値なのにがんでない(偽陽性)が存在する。腫瘍マーカー検査は、がんの検査の入り口であって、診断確定というゴールではないことに留意されたい。主な研究領域臨床検査医学、臨床化学、遺伝子検査学主な著書「遺伝子検査学」(医学書院)「臨床検査項目辞典」(医歯薬出版)「一目でわかる臨床検査」(メディカルサイエンスインターナショナル)「臨床検査技術学(臨床化学)」(医学書院)1982年 浜松医科大学医学部医学科卒業 1986年 浜松医科大学医学部附属病院検査部助浜松医科大学医学部附属病院検査部1994年 国立がんセンター中央病院臨床検査部医員1999年 国立がんセンター中央病院臨床検査部医長2000年 浜松医科大学医学部臨床検査医学助教2001年 浜松医科大学医学部臨床検査医学教授 浜松医科大学医学部附属病院検査部部長マエカワ浜松医科大学医学部 臨床検査医学 教授マサト人 真川前 授4腫瘍マーカーの役割偽陰性/偽陽性も含めて

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る