第36回 がん診療はこう変わった
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山ダ田 放射線医学総合研究所では1994年より重粒子加速器を用いて固形がんに対する治療を施行してきた。重粒子線の特徴は、①線量分布が優れていることからがん細胞を狙い撃ちできること、②生物学的効果が高いことより、放射線抵抗性腫瘍に対しても高い殺細胞作用を示すこと、である。臨床試験の結果から、重粒子線は従来放射線抵抗性であるとされていた腺がんや肉腫に対する有効性が示され、さらに短期照射が可能であることが明らかにされてきた。2003年には先進医療の承認が得られ、2015年3月までに9,021人の治療を行った。今回、消化器がんを中心にその臨床成果と今後の展望を紹介する。 ① 肝臓がん: 臨床試験は1995年6月から開始され2003年から短期照射である2回/2日照射法を実施している。45GyE以上の線量では3年生存率79%と高い有効性が示された。 ② 膵がん:局所進行膵臓がんに対する臨床試験は2003年4月より開始され、抗がん剤ゲムシタビン・重粒子線同時併用療法では45.6GyE以上投与群で2年生存率が48%と良好な結果であった。 ③ 直腸がん術後骨盤内再発:臨床試験は2001年4月から開始され、現在73.6GyE/16回/4週間で先進医療として治療を行っている。204例の解析では5年生存率は53%と良好な成績であった。 重粒子線は患者に過大な負担をかけることなく治療成績を向上させることが示された。主な研究領域放射線治療、消化器外科、放射線生物学、宇宙放射線被ばく医療、緊急被ばく医療主な著書共著「Carbon-Ion Radiotherapy『Pancreatic Cancer』」Pancreatic Cancer p221-p228, 2014 (Springer)「最新の重粒子線がん治療の成果:膵癌/週刊 医学のあゆみ『重粒子線がん治療Update』, 252(3), 227-232, 2015-01」(医歯薬出版)「直腸癌局所再発に対する重粒子線治療 1/臨床外科, 69(10), 1212-1218, 2014-10」(医学書院)「放射線治療/肝胆膵, 68(6), 929-934, 2014-06」(アークメディア)101985年 三重大学医学部卒業 1992年 千葉県がんセンター消化器外科医長1995年 千葉大学医学部医学博士号取得1996年 米国NASA Johnson Space Center、千葉大学第二外科医員Postdoctoral Fellowship1998年 放射線医学総合研究所重粒子医科学センター病院医長2010年 放射線医学総合研究所重粒子線治療センター病院第2治療室長ヤマシゲル 滋放射線医学総合研究所 重粒子線治療センター病院 第2治療室長消化器がんに対する 重粒子線治療の現状と展望

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