第35回 転換期の高齢者医療
7/16

 高齢者では、薬物動態の加齢変化や多病に由来する多剤服用を背景として薬物有害事象が起きやすい。したがって、まず臨床検査値などから薬物の代謝・排泄能を評価して投与量を調節する必要がある。次に、多剤服用対策は、薬物相互作用など有害事象の危険を減らすだけでなく、服薬不良や飲み間違いを回避するためにも重要であり、優先順位を考えて処方薬を最低限に絞り込む努力をする。その際に、生活習慣病の管理目標値や、ときに治療のゴールも若年成人と異なることを考慮に入れるとよい。また、認知機能障害や視力・聴力障害のある場合には、服薬管理能力に問題のあることが多いので、薬剤数と服用回数を少なくして飲みやすくする。さらに、一包化や服薬カレンダーなどの服薬支援ツール、服薬管理体制の整備などに工夫を凝らす。とにかく、治療を受ける側の視点で考えることが大切である。 講演では、高齢者とは切り離せない薬剤問題を中心に、高齢者に対する治療の考え方について解説する。主な研究領域高齢者の薬物療法、老年病の性差主な著書「薬は5種類まで 中高年の賢い薬の飲み方」(PHP新書)「男性ホルモンの力を引き出す秘訣」(大泉書店)「男が40を過ぎてなんとなく不調を感じ始めたら読む本」(メディカルトリビューン)1985年 東京大学医学部卒業1994年 東京大学医学部老年病学教室助手1996年 スタンフォード大学研究員、ハーバード大学研究員(〜1998年まで)2002年 杏林大学医学部高齢医学助教授2004年 東京大学大学院医学系研究科加齢医学助教授2013年 東京大学大学院医学系研究科加齢医学教授東京大学高齢社会総合研究機構副機構長兼任日本老年医学会理事日本動脈硬化学会監事日本Men's Health医学会理事アキシタマサ東京大学大学院医学系研究科 加齢医学 教授ヒロ弘 雅下秋 5高齢者に対する治療の考え方

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る