第35回 転換期の高齢者医療
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1993年 カリフォルニア大学サンフランシスコ 社会の高齢化とともに、要介護に陥る高齢者数が増加し続けており、要介護とならないような予防策を講じることが重要である。老化に伴い発症し、要介護状態に至るリスクが高い病態としてサルコペニアやフレイルが注目されている。しかしながら、一般的な認知度はまだまだ低く、必要な介入が行われていないのが実際である。加齢とともに筋肉量は減少し、筋力は低下する。筋肉量の低下は歩行速度や握力の低下に繋がるが、筋肉量の減少が進むと、ADL低下、転倒、入院、死亡などのリスクが高まることが明らかになり、その病態はサルコペニアと命名された。欧米の研究グループにより、歩行速度、握力及び筋肉量を指標としたサルコペニアの診断基準が提唱されたが、欧米人との体格の違いにより、アジア人における独自の診断基準の必要がある。そのため、我々はアジアの他の国々の研究者と協同でアジア人のための診断基準を作成した。 このサルコペニアと強く関連する病態として、フレイルがある。フレイルとは、加齢に伴う様々な機能変化や予備能力低下によって健康障害に対する脆弱性が増加した状態と理解されるが、フレイルは高齢者の生命・機能予後の推定ならびに包括的高齢者医療を行う上でも重要な概念である。本シンポジウムでは介護予防を行ううえで重要な病態であるサルコペニア、フレイルの評価から介入に至る流れを整理したい。主な研究領域老年医学、地域医療、フレイル、サルコペニア主な著書「健康長寿学大事典」(西村書店)「老年医学系統講義テキスト」(西村書店)「健康長寿診療ハンドブック」(メジカルビュー社)1984年 京都大学医学部卒業 1985年 島田市立島田市民病院勤務1987年 京都大学医学部大学院医学研究科博士京都大学医学部附属病院内科勤務課程(内科系専攻)入学1991年 京都大学医学部大学院医学研究科博士課程(内科系専攻)修了京都大学医学部老年科医員京都大学医学部老年科助手校ポストドクトラルフェロー1997年 京都大学医学部老年内科助手2002年 文部科学省研究振興局学術調査官 2003年 京都大学大学院医学研究科加齢医学講(〜2004年まで)2009年 京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻教授2015年 独立行政法人国立長寿医療研究センター副院長アラノリ荒井イ典師4独立行政法人 国立長寿医療研究センター 副院長ヒデ 秀介護予防におけるフレイル、サルコペニアの意義

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