第35回 転換期の高齢者医療
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長セ瀬英 現在、急速に進行している高齢化とともに、呼吸器疾患の社会的重要性が急増しつつある。特に慢性閉塞性肺疾患(COPD)や肺癌などの患者数、死亡者数は年々増加しつつあり、増勢に歯止めがかからない状況にある。世界的にも、WHOによる予測では、2020年の死亡要因の第3位がCOPD、第4位が下部呼吸器感染症(肺炎など)、第5位が肺癌、さらに第7位が結核と予想されるなど、呼吸器領域疾患による死亡者数の急増が予見されている。例えば米国においては、過去40年間で、虚血性心疾患や脳血管障害による死亡数が著明に減少しているのに対し、COPDによる死亡数は増加している。また、わが国においてもCOPD死亡者数は急増しており、今後も増加傾向が続くと予想される。 典型的なCOPD患者は喫煙歴を有する高齢者であり、慢性の咳、労作時の呼吸困難を有している場合にはCOPDがまず疑われる。この際、COPDにおける呼吸困難感は持続性・進行性であり、特に高齢者においては上記の症状を加齢によるものと考える傾向があるため、注意深く診療を行う必要がある。COPDに関しては日本呼吸器学会COPDガイドラインがあり、エビデンスの集積に応じて改訂がなされている。特に最新版ガイドラインでは、COPD患者で併存症が多いことやその管理の重要性が強調されるなど、呼吸器学のみならず老年医学の要点を含めた内容となっている。 講演では、特にCOPDに関する最新の話題を中心に概説するとともに、高齢化社会における呼吸器疾患の重要性と将来の展望について考察を加える。主な研究領域呼吸器内科学主な著書編書「図解:呼吸器内科学テキスト」101983年 東京大学医学部医学科卒業1983年 東京大学医学部附属病院研修医1985年 東京大学医学部附属病院老人科入局1990年 カナダ、マックギル大学留学(1993年まで)1996年 宮内庁皇太后宮職侍医(1997年まで)2000年 東京大学医学部老年病科講師2003年 東京大学大学院医学系研究科呼吸器内科学教授ナガタカヒデ東京大学大学院医学系研究科 呼吸器内科学 教授 隆高齢者の肺疾患:COPDを中心に

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