第35回 転換期の高齢者医療
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楽ギ木ミ実9 高齢者に多い心血管病は、心筋梗塞、狭心症、心不全、心臓弁膜症、大動脈瘤、閉塞性動脈硬化症である。いずれも動脈硬化の進展が関係する疾患である。「人は血管とともに老いる」という言葉通りであるが、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病が長い年月をかけて動脈に障害を与えた結果といった方がより正確である。心機能低下や歩行時の下肢痛に伴う運動能低下は高齢者の生活機能を低下させる。このような心血管病の予防にためには、生活習慣病の発症予防、早期治療開始、個人ごとに設定される治療目標の達成と段階的な対応が求められる。これは、青壮年期だけでなく高齢者になってからでも重要性が確認されている。 高血圧については80歳以上を対象にした研究で心血管病の予防効果、生命予後の改善だけでなく骨折の減少、認知症を増やさないことも確認されている。高齢になってからも生活習慣病とどのように付き合うかが高齢者の健康長寿に重要であることを示す一例である。一方で、高齢者は同じ年齢でも健康度が極めて多様であり、治療のエビデンスの観点からも一律の治療方針を示しにくい。 講演では、高血圧治療を例に、「治し支える」といった観点でどのような治療方針を医師に推奨しているか(治療ガイドライン)、治療を受けられる方に理解いただきたいこと、あるいは注意していただきたいことを紹介する。主な研究領域老年医学、高血圧学(組織レニン–アンジオテンシン系、高齢者高血圧)主な著書「高血圧治療ガイドライン2009」編集(ライフサイエンス出版)「高血圧治療ガイドライン2014」編集(ライフサイエンス出版)「健康長寿診療ハンドブック:実地医家のための老年医学のエッセンス」編集(メジカルビュー社)「老年医学系統講義テキスト」編集(西村書店)「高齢者高血圧の治療と管理」編集(先端医学社)1984年 大阪大学医学部卒業1989年 米国ハーバード大学ブリガム アンド ウイミンズ病院内科研究員1990年 米国スタンフォード大学心臓血管内科研究員1993年 大阪大学医学部老年病医学助手2002年 大阪大学大学院医学系研究科加齢医学講師2004年 大阪大学大学院医学系研究科加齢医学助教授2005年 大阪大学医学部附属病院 老年・高血圧内科科長(兼任)2007年 大阪大学大学院医学系研究科老年・腎臓内科学教授2014年 大阪大学医学部附属病院副病院長(兼任)ラクヒロ大阪大学大学院医学系研究科老年・腎臓内科学 教授 宏心血管関係:高血圧を中心に

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