第35回 転換期の高齢者医療
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 日常的に介護を必要としないで、自立した生活ができる生存期間である健康寿命に影響する疾患には、脳卒中、認知症、パーキンソン病、骨折、肺炎などがあげられるが、その多くは神経内科疾患の範疇に属するものである。この中から、本講演では脳卒中と認知症について解説する。 脳卒中は日本人が寝たきりになる原因の第一位を占めており、「脳出血」「くも膜下出血」や「脳梗塞」などが含まれる。脳卒中の危険因子は動脈硬化をきたす高血圧や糖尿病、脂質異常症などであり、これらの予防や治療が重要である。 アルツハイマー病(Alzheimer's disease:AD)と脳卒中による血管性認知症は、それぞれ認知症の第一、第二の原因疾患である。ADと血管性認知症は危険因子が共通しており、動脈硬化を促進する高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病は脳卒中の危険因子であるばかりでなく、ADの発症や進行にも影響を与える。一方、予防因子としては、ADとの関連では、野菜、果物、魚の摂取が報告されている。また、身体的活動によりADが抑制されることや、有酸素運動により高齢者の認知機能が改善され、脳萎縮が抑制されることも報告されてきた。このように、食事や運動などの生活習慣が認知症の発症に関与することが示唆されており、生活習慣病の予防や治療は血管性認知症だけではなく、ADの予防、進行抑制にもつながる可能性がある。主な研究領域臨床神経学、老年医学、認知症、神経生化学特に、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、多系統萎縮症の分子病態に関する研究主な著書「認知症治療薬.Pocket Drugs 2014.」(医学書院)「Alzheimer病.イヤーノートTOPICS 2013-2014内科・外科疾患 第3版」(MEDIC MEDIA)「新しいアルツハイマー病の診断基準.Annual Review2013神経」(中外医学社)「神経疾患に対する抗体療法―アルツハイマー病における免疫療法―.抗体医療Update―開発コンセプトから最新治療実績まで―、別冊・医学のあゆみ」(医歯薬出版株式会社)1980年 東京大学医学部医学科卒業1982年 東京大学医学部附属病院神経内科入局1986年 東京都老人総合研究所研究員1989年 医学博士 1992年 筑波大学臨床医学系神経内科講師1997年 筑波大学臨床医学系神経内科助教授2004年 筑波大学大学院人間総合科学研究科助ハーバード大学医学部ブリガム婦人病院神経疾患センター研究員教授2005年 筑波大学大学院人間総合科学研究科教2010年 筑波大学附属病院副病院長(兼任)タマオカアキラ筑波大学大学院人間総合科学研究科疾患制御医学専攻神経病態医学分野(医学医療系神経内科学)教授 晃玉岡授8脳神経関係:脳卒中、認知症

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