マクロとミクロの視点が重要である。正しい栄養状態とは、バランス良く摂られた食物が正しく消化・吸収され循環に周り、有効・適切に活用・消費され、余剰は適量備蓄される、という健康な過程上に成り立ち、このどこに異常があっても疾患に繋がる。古くは全般的な栄養不足が人類の敵であったが、文明の時代に至り栄養過多・摂食異常症や特定栄養素の過不足等の病態が課題となってきた(ビタミン・鉄・ヨード・AN・メタボ・亜鉛等)。評価は、体格・身体所見、ついで尿・血液検査の順で捉えたい。異常に至った経過の聞き取りが重要な場合も少なくない。まず「体重は健康のバロメーター」は現代でも金言で、絶対値だけでなくその推移が栄養状態を表す。BMI(体格指数)で捉えればより正確だが、体脂肪率(裏返せば筋骨量)や浮腫も加味しないと運動選手や腹水の患者を「肥満」と呼ぶ愚を犯す。少し細かく見ると、結膜・舌・手掌・爪・皮膚・体毛等にも栄養評価の指標は散在している。次に検査に目を転じよう。まず尿糖が中等量以上に出る糖尿病がある場合、栄養バランスは負である。尿ケトン体はインスリンの強い欠乏か飢餓を表す。血清Alb・ChEは摂食不良・消耗性疾患患者で鋭敏に栄養状態を反映し変動する。BUN/Crnn比や尿酸値の推移は水分量の変動を反映する。Crnnは腎機能だけでなく筋量も反映する。脂質の数値は絶対値は脂質代謝やホルモン異常を表すが栄養状態を反映した変動も多い。各種疾患の病態管理としてだけでなく、メタボでもサルコペニアでもない真の健康体作りの上で、栄養状態の病態・評価法の正しい理解を心がけたい。主な研究領域内科学・内分泌代謝学・糖尿病学・甲状腺学糖尿病治療法の開発細胞内Ca情報伝達機構の研究バセドウ病発症機構の解明内分泌腫瘍の発生機構の解明生体機能のモデル解析主な著書共著「日常診療における内分泌疾患の見つけかた:問診と診察のコツから診断まで」(文光堂)「『1型糖尿病ってどんな病気』教えて、りんりん」(東京学芸大学子供未来プロジェクト)「内分泌機能検査ハンドブック」(文光堂)編著「入院患者の血糖コントロール:レジデントノート2013年7月号特集号」(羊土社)1983年 東京大学医学部卒業 1987年 公立昭和病院内分泌代謝科医長1989年 東京大学第四内科助手1991年 ハーバード大学生化薬理学教室に留学1994年 ハーバード大学客員教授兼任2000年 防衛医科大学第3内科(内分泌代謝内東京大学病院研修医等科)講師2010年 防衛医科大学総合臨床部教授・部長2011年 防衛医科大学病院病院長補佐(教育担当)兼任2013年 防衛医科大学病院病院長補佐(管理・運営担当)・地域医療連携室長兼任ナカユウ防衛医科大学校 総合臨床部 教授タ 祐田中ジ司7栄養状態の評価と病態
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