第34回 栄養と食欲
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 私たちは、1)自身の身体を構成するため、2)日常生活を営むためのエネルギーを獲得するため、3)食事の満足感を得る為に、毎日の食事から栄養素を摂取している。栄養素は、消化により分解され、さらに吸収という過程を経て、各臓器や器官に届けられる。次に、届けられた栄養素は、各臓器で代謝を受けて、体を作り、エネルギーを獲得するために働く。私たちが摂取する栄養素の多くは、吸収されやすい形に分解されなければならない。消化(digestion)とは、食物中の栄養素を分解して吸収されやすい形にする過程を言う。つまり、食事に含まれている3大栄養素(糖質、脂質、タンパク質)は消化を受け、その後、腸管を介して体に取り込まれる。この過程を吸収 (absorption)と言う。糖質はグルコースなどの単糖類に、脂質は脂質の主成分であるトリグリセリドを脂肪酸とモノグリセリドに、タンパク質は個々のアミノ酸に分解され吸収される。小腸から吸収された各栄養素は、血管あるいはリンパ管を通じて肝臓やさまざまな組織に輸送される。その後、各臓器に届けられた栄養素は代謝を受ける。たとえば、グルコースは、細胞に運ばれ細胞質の解糖系という経路で代謝を受けてエネルギー源として利用される。一方で、美味しくて楽しい食事は、食べる人に満足感や充実感、安心感をもたらすので、人間関係を和やかにすることが期待できる。 本講演では、食事のもつ効果を、栄養素の吸収・代謝を中心に解説する。主な研究領域栄養学主な著書「栄養代謝の調節、栄養生化学(栄養科学シリーズ)」(講談社サイエンティフィク)「栄養素の代謝と生理機能 改訂第2版認定病態栄養専門士のための病態栄養ガイドブック、 14-20」(メデイカルレビュー社)「ナトリウム・グルコース、ナトリウム・リン、ナトリウム・アミノ酸共役トランスポーター、日本臨牀、64巻、増刊号2 分子腎臓学 145-149」(日本臨牀社)「栄養の概念、エッセンシャル基礎栄養学」(医歯薬出版)「エネルギーの平衡、代謝、栄養、ギャノング生理学 原書21版(日本語訳本)、287-328」(丸善)共著「動物を用いた栄養生化学および栄養関連酵素実験 栄養生化学実験 149-177」(共立出版)1979年 徳島大学医学部栄養学科卒業(管理栄養士)1984年 徳島大学医学部(病態栄養学講座)助1992年 徳島大学大学院医学部講師1994年 徳島大学医学部(病態栄養学講座)助教授1999年 徳島大学医学部(栄養化学講座)教授2004年 徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部(分子栄養学分野)教授2013年 徳島大学大学院栄養生命科学教育部長・徳島大学医学部栄養学科長ミヤモトケン徳島大学大学院 ヘルスバイオサイエンス研究部分子栄養学分野 教授イチ一 賢本宮手3栄養の吸収と代謝

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