オ夫 食はヒトの基本的要求の一つであり、老若男女、疾病の有無にかかわらず、生きとし生ける限り、楽しむものでなければならない。食の持つ機能は多彩であり、栄養はその基本的な要素であるが、食が報酬系や社会行動と深く関わることに留意する必要がある。 ヒトの食行動は、栄養の過不足によるホメオスタティックな調節よりも、認知情動性調節がより上位に位置し、重要であると考えられている。若い女性に多く見られる神経性食欲不振症や神経性過食症は、それぞれ痩せと軽度肥満に位置するが、単なる低栄養、過栄養を越えた認知異常病態をその特徴とする。 一方、我が国の超高齢化を背景に、高齢者の食欲不振、骨格筋委縮(サルコぺニア)や悪液質の増加が見られる。ここにも孤立など、生物学的背景や食の栄養学的側面を越えた問題が存在する。 本講演では、食の持つ多彩な機能とその応用を、種々の病態を踏まえながら述べてみたい。主な研究領域食欲・消化管運動調節、神経ペプチド、心身症、肥満と悪液質、摂食障害、癌の統合医療主な著書「新臨床栄養学:食欲の調節」(医学書院)「改訂第5版糖尿病専門医研修ガイドブック:薬物治療 抗肥満薬」(日本糖尿病学会編,診断と治療社)「心療内科実践ハンドブック症例に学ぶ用語集:ストレス」(マイライフ社)「肥満と消化器疾患:摂食コントロール 中枢性・末梢性メカニズム」(日本消化器病学会)「今日の治療指針2008年版:摂食障害」(医学書院)101978年 神戸大学医学部卒業 神戸大学医学部附属病院医員(研修医)1980年 神戸大学大学院医学研究科入学(内科学Ⅱ)1984年 同大学院 単位修得後退学、 1997年 神戸大学医学部附属病院講師2000年 神戸大学医学部助教授2004年 神戸大学医学部附属病院糖尿病代謝内神戸大学医学部助手科診療科長2005年 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科心身内科学分野教授及び鹿児島大学病院 呼吸器・ストレスケアセンター 心身医療科診療科長2009年 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 健康科学専攻長2012年 鹿児島大学病院漢方診療センター長イヌイアキ鹿児島大学大学院 心身内科学 教授乾 明食とこころ
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