オ小澤キ樹師8 一番有効な栄養療法とは、3度の食事を口からおいしく食べることである。当たり前なことかもしれないが、病気で入院している患者さんや介護施設や自宅で長期療養している患者さんではこれが難しい場合がある。その原因は、①味覚や食事形態が合わない、②認知機能や嚥下機能の低下、③下痢や便秘など消化器症状、④感染症、悪性腫瘍、心疾患などの原病の増悪、⑤治療のために投与されている点滴や薬剤の副作用、などさまざまである。このような状態が放置されるといずれは低栄養の状態となり、免疫力や抵抗力が低下し、さまざまな弊害が生じてくる。 我が国では、65歳以上の入院患者さんの約40%が、長期療養施設入居者の約30%が何らかの低栄養の状態にあるといわれ、総合的栄養療法が行われることが急務であった。そこで、近年多くの病院で実践されている取り組みが、NST(栄養サポートチーム)である。NSTとは、患者さんの栄養管理を行うために医師、管理栄養士、看護師、薬剤師、理学療法士などで講成されるチームである。個々の患者ごとに多職種の観点から栄養評価を行い、最も適切な投与経路を選択し、必要な投与エネルギーと投与成分を決定する。NSTが推奨した指示は主治医や病棟に伝達され的確な栄養療法が行われ、手術合併症・褥そう・感染症の発生を減少させるとともに、原疾患の早期治療に貢献する。 本講演では、実際に当院に行われているNSTの活動などをまじえて、低栄養の治療についてお話したいと思う。主な研究領域循環器内科学、高脂血症、動脈硬化症、総合内科学主な著書分担執筆「新看護学9 成人看護〔1〕」(医学書院)「生涯教育のためのセルフトレーニング問題と解説」(社会法人日本内科学会)1986年 東海大学医学部医学科卒業 1988年 東海大学医学部付属病院循環器内科学東海大学医学部付属病院前期研修医医員1991年 平塚市立市民病院循環器科医員1995年 東海大学医学部付属大磯病院循環器内科助教1999年 東海大学医学部付属大磯病院循環器内科講師・医長2003年 東海大学医学部付属病院総合内科学講2005年 東海大学医学部付属病院総合内科学准教授2006年 東海大学医学部付属病院総合内科学診療科長ザワヒデ東海大学医学部 内科学系 総合内科学 准教授 秀低栄養の治療
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