第32回メディコピア教育講演シンポジウム血液の病気◆ここまで進んだ診断と治療尾オユキ基オ男 5 生命が誕生した時から、外的な力により生体が傷つき、体液を失うことは生命の維持に対する最も大きな脅威であった。単細胞から多細胞、そして血液が体内を循環する高等動物に進化しても、外傷による出血を速やかに止めることが生存に関わる大きな命題である。 生体内では血液は流動性を保ちながら血管の中を循環しており、病的な状態の時以外はその状態が維持される。しかし、何らかの原因により血管が損傷を受けると、血液は速やかに傷害部に血栓、すなわち、血小板と凝固因子を含む凝固塊を形成し、出血を止める。また傷害部位の血管は収縮し、出血量を減少させる。血栓形成は血小板が血管内皮下組織と反応して、粘着、放出、凝集をおこす一次止血(一次血栓形成)と、血液凝固反応が進行して強固な血栓塊を形成する二次止血(二次血栓形成)に分けられる。血小板凝集塊からなる一次血栓は一般的にはもろく、そのままでは崩れてしまうことが多いが、活性化された血小板細胞膜は第Ⅸ因子、第Ⅷ因子、第Ⅴ因子などの凝固因子の反応の場を与える。このようにして凝固反応が促進され、最終的にトロンビンという強力な酵素が産生される。トロンビンはフィブリノーゲンを生体糊であるフィブリンに変化させ、血小板凝集塊を巻き込む形でフィブリンネットワークが形成されて強固な二次血栓となる。主な研究領域臨床検査医学、血栓止血学、血液内科学主な著書分担執筆「臨床検査法提要」「良く分かる病態生理:血液疾患」「血液内科 ケーススタディ」「内科学書」(中山書店)など昭和52年 東京大学医学部卒業 東京大学医学部附属病院内科 54年 東京大学第一内科入局 62年 山梨医科大学附属病院検査部講師平成 3年 山梨大学医学部臨床検査医学助教授 9年 山梨大学医学部臨床検査医学教授 同医学部附属病院検査部部長 山梨大学医学部 臨床検査医学 教授ザキ崎 由出血が止まるメカニズム
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