第32回メディコピア教育講演シンポジウム血液の病気◆ここまで進んだ診断と治療通 任3 トオヤマカオル 健常者の赤血球は円盤状で、中央部が陥没したドーナツのような形態をしている。このような形の利点として、凹みのない球状よりも膜の表面積が広くなるので膜表面を介するガス交換の効率がよい、緊満した状態とちがって内容量にゆとりがあるので外圧や浸透圧によって破壊されにくい、変形能が高く毛細血管のような狭い空間を容易に通過できる、などが挙げられる。 赤血球の主たる機能は肺から取り込まれたO2を全身各所へ運搬・供給し、入れ替わりにCO2を回収することである。そのためにヘモグロビンという酸素結合蛋白を有しており、ヘモグロビンの中心部に配位された鉄原子(Fe2+)がO2と可逆的に結合する。心臓から送り出された赤血球は全身をくまなく巡りながら、末梢組織(常に酸欠状態にあると考えてよい)の毛細血管を通過する際にO2を組織に送り届け、CO2を回収する。組織へのO2分配はきわめて巧妙な仕組みのもとに調節されている。 一方赤血球数自体も精緻に調節され、恒常性が維持されている。血中のO2分圧が低下するとエリスロポエチンの分泌が亢進して、骨髄における赤血球造血が促進され末梢に供給される。ところがその過程のどこかに支障、たとえば造血幹細胞レベルでの障害、赤血球分化・成熟過程での鉄や栄養素の欠乏、あるいは完成された赤血球の崩壊や失血のために産生と喪失のバランスが崩れると、臨床的な貧血として認識される。主な研究領域血液検査診断学骨髄異形成症候群の病態研究と臨床試験主な著書編著「血液診療エキスパート」(中外医学社)分担執筆「ダイナミックメディシン 骨髄異形成症候群」(西村書店)「WHO分類第4版による白血病・リンパ系腫瘍の病態学」(中外医学社)「今日の治療指針 骨髄異形成症候群」(医学書院)「症候群ハンドブック」(中山書店)「骨髄異形成症候群(MDS)のマネジメント」(医薬ジャーナル社)昭和58年 京都大学医学部卒業 3年間内科臨床研修平成 2年 福井医科大学第一内科助手 7年 同講師(病棟医長兼任)8年 京都大学医学部附属病院検査部へ転12年 同検査部講師・副部長14年 川崎医科大学検査診断学教授(同附属病院中央検査部長兼任)19年 川崎医療短期大学臨床検査科・主任教授併任 川崎医科大学 検査診断学 教授山 薫赤血球─全身への酸素の運搬役─
元のページ ../index.html#5