第32回メディコピア教育講演シンポジウム村タ血液の病気◆ここまで進んだ診断と治療ムラミツル 血小板減少症は末梢血中の血小板数が正常より低値を示す病態を言うが、基準範囲以下でも直ちに病的とはいい難く、通常は血小板数が10万/μl以下を指す。原因のいかんに拘わらず出血傾向を来しうるが、その症状は一般に皮膚の点状出血や斑状出血が多く重症では粘膜出血をきたす。一方、通常凝固障害でみられる関節出血や筋肉内出血は血小板減少症では稀である。血小板数については、機能異常がなければ通常10万/μl以上は正常の止血能を有すると考えて良い。5〜10万/μlでも出血症状は少ないが外傷や手術時の出血量の増大がみられる。5万/μl以下、特に2〜3万μl以下では紫斑、歯肉出血、鼻出血などがしばしば観察される。血小板減少の原因は、骨髄での巨核球-血小板の産生低下、末梢での消費や破壊亢進、分布異常、の3つが主である。 血小板減少患者に遭遇したらまず偽性血小板減少症を除外する。後天性の低下で、かつ播種性血管内凝固(DIC)、ヘパリン惹起血小板減少症(HIT)や血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)が除外されれば骨髄穿刺を行い診断することが多い。特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の頻度が高いが、薬剤性血小板減少症も高頻度でみられるので薬剤服用歴の聴取は非常に重要である。 本講演では鑑別診断に加え、血小板減少症患者への一般的ケア、血小板輸血の適応、さらに観血的処置を行う際の留意点などを含めて総括的に議論したい。主な研究領域臨床検査医学、血液学、血栓止血学主な著書共編「病態・薬物治療概論」、「内科研修マニュアル」分担執筆「血小板生物学」、「臨床検査ガイド」など11昭和56年 慶應義塾大学医学部卒業、同大学病院研修医、専修医(内科学)平成 元年 米国カリフォルニア州スクリップス研究所リサーチフェロー (止血・血栓、動脈硬化の分子生物学) 4年 慶應義塾大学助手(医学部血液感染リウマチ内科) 9年 慶應義塾大学病院中央臨床検査部主任医師 10年 慶應義塾大学専任講師(内科学) 17年 慶應義塾大学教授(医学部臨床検査医学)慶應義塾大学医学部 臨床検査医学 教授田 満血小板減少症
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