第32回 血液の病気
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第32回メディコピア教育講演シンポジウム血液の病気◆ここまで進んだ診断と治療澤ダ田一 8サワケンイチ 貧血はさまざまな病気を写す鏡である。貧血の原因は、①産生低下、②崩壊亢進、③分布異常、④出血の4つに大別される。①産生低下の代表的疾患である鉄欠乏性貧血は、ヘモグロビン合成障害による貧血を起こす。鉄欠乏の原因は上記④の出血や摂取不足など多岐にわたる。出血では痔疾、胃十二指腸潰瘍、胃がんや大腸がんなどを鑑別する。女性では子宮筋腫による過多月経が最も多い原因であるが子宮がんなどの悪性腫瘍の鑑別も必要である。胃の切除や無酸症の場合はビタミンB12を吸収できなくなるためDNA合成障害による貧血をおこす。感染や関節リウマチなどの慢性の炎症やがんなどでは、鉄の利用障害によって貧血を起こす。腎不全や甲状腺低下症などの内分泌疾患では、赤血球の産生因子であるエリスロポエチンの産生低下によって貧血をおこす。赤血球のもとになる造血幹・前駆細胞に対する自己免疫によっても再生不良性貧血や赤芽球癆などの貧血が起こる。②崩壊亢進の代表的疾患は赤血球が破裂する溶血性貧血であり、赤血球自体の異常(遺伝性球状赤血球症など)、自己免疫(自己免疫性溶血性貧血など)、赤血球破砕の亢進(心臓性溶血性貧血-人工弁など)によって生じる。③分布異常は脾腫を伴う疾患でみられ肝硬変による脾機能亢進症が代表的疾患である。 本講演では、貧血のもとになるさまざまな病態の鑑別診断を通して、基礎疾患の早期発見、治療と予防について解説する。主な研究領域血液内科学、貧血、造血幹細胞主な著書分担執筆「症状から診る内科疾患」(メジカルビュー社)「高齢者の血液疾患』(医薬ジャーナル社)「カラーテキスト血液病学」(中外医学社)「Iron Overloadと鉄キレート療法」(メディカルレビュー社)「内科学書 新改訂版7版」(中山書店)昭和51年 北海道大学医学部医学科卒業    北海道大学医学部内科学第二講座にて研究に従事 北海道大学医学部附属病院医員(研修医)        伊達赤十字病院医師  53年 北海道大学医学部附属病院医員  56年 北見赤十字病院医師  57年 北海道大学医学部内科学第二講座研究生  59年 北見赤十字病院医師  60年 北海道大学医学部内科学第二講座研究生  61年 アメリカ合衆国Vanderbilt University School of Medicine, Research Fellow  63年 アメリカ合衆国Vanderbilt University School of Medicine, Research Assistant Professor平成 元年 北海道大学医学部内科学第二講座研究生   北海道大学医学部附属病院医員、同助手 5年 北海道大学医学部内科学第二講座助手      6年 北海道大学医学部内科学第二講座講師   8年 北海道大学大学院医学研究科分子病 北海道大学医学部附属病院講師態制御学講座(第二内科)助教授14年 秋田大学医学部内科学第三講座(現:内科学講座血液・腎臓・膠原病内科学分野)教授秋田大学大学院 医学系研究科血液・腎臓・膠原病内科学 教授 賢貧血

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