第31回 腎臓病
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河1 メディコピア教育講演シンポジウムも多数の参加者からご好評を頂き、回を重ね第31回を迎えることになった。過去30回のシンポジウムで一度もメインテーマとして登場していなかった腎臓病であるが、近年新しい観点から注目を集めているため今回取り上げることとなった。腎臓は、生命現象の結果として体内で産生された不要な物質のほとんどを尿として体外に排出するという重要な働きを有しており、生命維持のための体内環境を整える重要な働きをしている。その腎臓が十分に機能しなくなるいろいろな腎臓病があるが、その行きつくところは腎不全、そして尿毒症となり死の転機をとる。腎不全は、わが国での死因の8番目に位置し、現在、人工透析や腎移植を受けている人たちは約30万人で、しかも年々1万人のペースで増加しており、そのために使われる医療費も年間1.3兆円を超えている。しかし、多くの腎臓病は早期に発見し、適切に治療すると回復することができる。そこで、世界的に腎臓病の早期発見、早期治療の必要性が広く認識されるようになっている。わが国では、学童の学校検診に尿検査を取り入れ、学童期から腎臓病の早期発見に努めている。近年、とくに腎臓病に対する理解や早期診断法、治療法などで大きな進歩がみられ、世界的に腎臓病の概念および診断基準が統一されつつある。 腎臓病には、大きく分けて、慢性に経過する慢性腎臓病(CKD)と急性に腎不全が進行する急性腎臓障害(AKI)があり、いずれも尿検査が早期診断の手掛かりとなる。今回は、慢性腎臓病を中心に取り上げ、それが重大な循環器疾患にもつながることを知って頂き、できるだけ早期に腎臓病を発見し、健やかな長寿を目指して頂けるようプログラムを企画した。 本シンポジウムの企画にあたっては、福島県立医科大学渡邊毅教授のご指導を頂き、わが国のこの分野をリードされている専門医に講演を快くお引き受け頂くことができた。また、女優の佳耶晃子さんには腎臓病の経験者として特別発言を頂くことになった。新春の一日を、参加者皆さんの明日への健康維持のために役立てて頂ければ幸いである。主な研究領域臨床検査一般、血漿蛋白学、臨床免疫学、遺伝子診療、臨床検査の国際標準化主な著書「血漿蛋白−その基礎と臨床」、「Clinical Aspects of the Plasma Proteins」、「演習臨床病理学」、「臨床検査医学」、「異常値の出るメカニズム」、「遺伝子診療'95」など昭和30年 北海道大学医学部卒業  31年 米国クアキニ病院インターン  33年 米国マイアミ大学医学部病理学専攻  37年 米国形態病理・臨床病理学専門医  38年 国鉄中央鉄道病院(現・JR東京総合病院)副医長  41年 日本大学医学部助教授  47年 同教授  49年 自治医科大学教授・同附属病院臨床病理部長平成 9年 同名誉教授・国際臨床病理センター所長  17年 (財)国際医療技術交流財団理事長  22年 (財)予防医学事業中央会理事長カワイ自治医科大学 名誉教授・国際臨床病理センター所長タダシ合 忠はじめの言葉

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