第31回 腎臓病
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木キ村郎9 高血圧(血圧が140/90mmHg以上)であっても、普通は全く自覚症状はない。しかし、高血圧が持続すると血管障害から脳卒中や心筋梗塞といった、心血管疾患の強力な危険因子となる。これらの疾患により命を落としたり、障害を残し著しく生活の質が損なわれることになる。そこで、高血圧はサイレントキラー(物言わない殺し屋)とも呼ばれる。高血圧はさらに慢性腎臓病の原因(腎硬化症という)となり、また、すでにある慢性腎臓病(慢性腎炎など)を悪化させる重要な危険因子でもある。その一方で、慢性腎臓病は高血圧の原因となり、また、すでにある高血圧を悪化させる。このように、高血圧と慢性腎臓病の間には悪循環の関係がある。したがって、腎臓を悪くさせないためには高血圧の治療は不可欠である。腎臓の働きが低下して透析をうけなければならなくなる状態を末期腎不全というが、この末期腎不全の唯一の独立した危険因子が高血圧であることが明らかになっている。また、高血圧を治療すると慢性腎臓病の進行が抑制されることも多くの臨床研究により明らかになっている。 本講演では高血圧と腎臓病そして心血管疾患の密接な関係を述べ、慢性腎臓病と心血管疾患を抑制するために高血圧の治療を行うことがいかに大事かを述べる。主な研究領域腎疾患の進展機序とその治療高血圧の成因と病態主な著書「腎生検から学ぶ腎臓病学」(診断と治療社)「腎疾患の早期発見とその対策」(メジカルビュー社)「WM腎臓内科コンサルト」(メディカル・サイエンス・インターナショナル)昭和49年 東京大学医学部卒業  56年 デンマークコペンハーゲン大学留学(2年)平成 6年 東京大学医学部第二内科講師   9年 東京大学大学院腎臓内科学講師  13年 聖マリアンナ医科大学腎臓・高血圧内科教授ケンムラロウ聖マリアンナ医科大学 腎臓・高血圧内科教授ジ二 健高血圧と腎臓病─ばかにできない高血圧─

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